再使用型ロケットをアジャイル開発、将来宇宙輸送システムが2028年度に実用化へ:宇宙開発(2/2 ページ)
将来宇宙輸送システムは、再使用型ロケットの実用化に向けた小型離着陸実験機「ASCA Hopper」の開発プロジェクトについて説明した。
ASCA Hopperの開発の詳細
現在開発中のASCA Hopperは、直径2000mm、全長4000mm、乾燥重量663kg、全備質量743kg、飛行時間10秒、飛行高度10mという、ロケットの離着陸そのものの実験を目的とした機体だ。
約半年で開発と製造を終えて、既に単体燃焼試験を始めているエンジンは、燃料として液体メタンと液体酸素を用いる。短期間の開発を可能とするため、最終冷却系は省いており、断熱材を用いていることが特徴だ。
他の推進系についても、極低温バルブ耐圧/トルク試験、点火器単体試験、インジェクタ単体試験、液体窒素(LN2)流し試験などを行っている。
電装系については、OBC(オンボードコンピュータ)をドローン向けの部品から流用するなど、既存品の活用を主眼に置いてそれらの試験を行っている。
姿勢制御用のSJ(サイドジェット)については、2軸/3軸同時噴射試験を2024年10月に行う予定である。
再使用型ロケットで重要な役割を果たすのが着陸脚だ。2024年8月末に着陸脚の単体試験を、同年12月にはフライト用の着陸脚の落下試験を行う。
これらの試験を経て、2024年度内となる2025年3月末までにASCA Hopperの地上離着陸試験を実施したい考えだ。
なお、ASCA Hopperの試験はスペースポート紀伊(和歌山県串本町)で行っている。ASCA Hopperの現在の開発メンバー数は約20人で、ISCの社外からJALエンジニアリングやPDエアロスペースのメンバーも加わっている。また、ASCA Hopperのプロジェクトとは別に、研究開発プラットフォームであるP4SDの開発を担う8人とも連携しながら進めている状況だという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- アジャイル開発とは何か、まずは基礎を知ろう
複雑性/不確実性に対応するためソフトウェア開発業界で広く採用されている「アジャイル開発」の製造業での活用法を紹介する本連載。第1回は、アジャイル開発の定義や向いている領域、アジャイル開発の各手法を中心に、基礎から解説する。 - ソフトもハードもビジネスモデルも、今アジャイル開発が製造業に求められる理由
なぜ、現在製造業のアジャイル開発の手法が広く求められているのだろうか。SAFeを展開するScaled Agile SAFeメソドロジスト兼フェローであるハリー・コーネマン氏に話を聞いた。 - 宇宙グレード部品の開発活性化へ、アクセルスペースが軌道上実証サービスを提供
アクセルスペースが宇宙用コンポーネントの軌道上実証に特化したサービス「AxelLiner Laboratory(AL Lab)」を発表。2026年内を予定しているAL Labサービス適用第1号としては、2020年から同社とシナノケンシが共同開発を進めてきたリアクションホイールが対象となる。 - 超小型衛星のフォーメーションフライトで「衛星通信3.0」へ、ISTが事業報告会
インターステラテクノロジズ(IST)が同社の新たな経営体制や新型ロケット「ZERO」の開発進捗状況、新たな取り組みとなる衛星開発事業などについて説明した。 - 固体潜熱蓄熱材で電源を安定化、多機能の超小型人工衛星「DENDEN-01」の全貌
関西大学、福井大学、名城大学、アークエッジ・スペースは、4者の共同研究グループで開発を進めてきた1Uサイズ(10×10×10cm)の超小型人工衛星「DENDEN-01」の特徴や開発の意義などについて説明した。 - 木造人工衛星が安全審査をクリアし、宇宙空間で運用予定
住友林業と京都大学は、2020年4月から取り組んできた「宇宙木材プロジェクト」で開発した木造人工衛星「LignoSat」が完成した。2024年秋に、ISSの日本実験棟より宇宙空間に放出する予定だ。