富士ソフトが非公開化でIT×OT分野への注力を加速、将来的な再上場も視野に:製造マネジメントニュース
米国投資会社のKKRは、富士ソフトの普通株式および新株予約権を、KKRが運用する投資ファンド傘下のFKを通じて公開買い付け(TOB)により取得すると発表した。この公開買い付けにより、富士ソフトはKKRの傘下となるとともに株式は非公開化される。
米国投資会社のKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)は2024年8月8日、富士ソフトの普通株式および新株予約権を、KKRが運用する投資ファンド傘下のFK株式会社(以下、FK)を通じて公開買い付け(TOB)により取得すると発表した。富士ソフトも同日開催の取締役会において、FKによる公開買い付けが開始された場合に賛同意見を表明するとともに、富士ソフトの株主や新株予約権の所有者に対して応募を推奨することを決議したと発表している。この公開買い付けにより、富士ソフトはKKRの傘下となるとともに株式は非公開化される。
FKによる富士ソフトの公開買い付けは2024年9月中旬の開始を目指しており、そこから30営業日の期間実施される予定。買付価格は普通株式1株につき8800円で、買い付け可能な株式の最大数(6379万275株)を取得した場合の金額は約5613億円となる。買付予定株数の下限は所有割合で66.64%となる4214万2900株に設定しており、これを下回った場合には公開買い付けは不成立となる。公開買い付けが成立した後は、スクイーズアウト(少数株主の排除)手続きにより富士ソフトは上場廃止となる予定。最終的な決議を行う臨時株主総会の開催は12月ごろになる見込みだ。
買付価格の8800円は、KKRによる公開買い付け提案の前営業日終値6730円に対して30.76%のプレミアムが上乗せされている。直近1〜6カ月の単純平均値と比較しても約38〜41%のプレミアムが付いている。
なお、富士ソフトは2022年6月に取締役会出席者で構成される企業価値向上委員会を設置し、企業価値最大化に向けた施策を検討してきた。2023年7月には、いわゆるもの言う株主として知られる3D Investment Partners(3DIP)からの提案を受けて、企業価値向上に向けて非公開化を含めたあらゆる選択肢の検討を始めている。同年11月には、いわゆる親子上場の問題を解決するため、ヴィンクス、サイバーコム、サイバネットシステム、富士ソフトサービスビューロの上場子会社4社を公開買い付けを通じて完全子会社化している。そして、2024年6月にKKRを含む投資ファンド3社からの提案を受領した後、同年7月にKKRに独占交渉権を付与しており、今回のFKによる公開買い付けが実施が正式に発表されることになった。
富士ソフトの非公開化で大きな役割を果たした3DIP(株式所有割合23.46%)の他、投資会社のFarallon(株式所有割合9.22%)は、FKによる公開買い付けに応募する契約を締結しており、下限に設定した66.64%のうち半分近くを既に満たしていることになる。
富士ソフトは組み込み系/制御系ソフトウェア、業務系ソフトウェアおよびシステムを中心に展開する国内大手SIerであり、2023年度(2023年12月期)の連結業績は売上高は2988億5500万円、営業利益は206億8400万円などとなっている。現在は、「IT×OT分野のシステム/ソフト&サービスを提供するリーディングカンパニー」を将来ビジョンとして掲げ、確実な成長と革新とさらなる飛躍への礎作りに位置付ける2024〜2028年度の5カ年の中期経営計画を推進しているところだ。今回の非公開化をきっかけに、将来ビジョンへ向かう道筋を具体化し、変革を進め再上場を目指すとしている。
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