ルネサスのアルティウム買収が真価を発揮するのは2030年?:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
ルネサス エレクトロニクスが同社の概況や事業方針などについて説明。2024年下半期中の買収完了を予定しているアルティウムとのシナジーによる価値創造が軌道に乗るタイミングが2030年ごろになることを示唆した。
ルネサス エレクトロニクスは2024年5月16日、オンラインで会見を開き、同社の概況や事業方針などについて説明した。2024年下半期中の買収完了を予定しているアルティウム(Altium)とのシナジーによる価値創造が軌道に乗るタイミングが2030年ごろになることを示唆した。
ルネサスは2030年の時価総額を2022年比で6倍に拡大する方針を打ち出している。この6倍という数字は、中期計画の実施による成長で企業規模(Scale)を2倍に拡大するとともに、企業評価(Valuation)を3倍に高めることで実現する計画になっている。同社 代表取締役社長兼CEOの柴田英利氏は「2023年は企業規模、企業評価とも着実に伸びて、時価総額は2022年比で2倍にすることができた」と語る。
2023年の企業規模拡大に向けた施策としては、那珂工場(茨城県ひたちなか市)の40nmマイコンや高崎工場(群馬県高崎市)のSiC(シリコンカーバイド)デバイスの製造ラインにおける設備投資、WolfspeedとのSiCウエハー長期供給契約の締結、2023年6月に完了したNFC(近距離無線通信)技術を持つPanthronicsの買収などがある。2024年に入るものの、GaN(窒化ガリウム)デバイスを手掛けるTransphormの買収は順調に進んでおり、計画していた2024年下半期から少し前倒しになる可能性があるという。
企業評価の成長に向けた取り組みについては、これまで再建を支えてきたINCJ(旧産業革新機構)の株式売却に加え、日経平均株価の構成銘柄に加わるなど国内外の株式市場で評価が高まっていること、そして配当を再開したことなどを挙げた。また、2023年は半導体需要がダウンサイクルに入っていたものの、精緻な在庫管理などを進めることで業績に大きな影響を与えなかったことも企業評価の成長の大きな要因となっている。
柴田氏が今後の時価総額拡大に向けた取り組みとして挙げたのが、現在の企業規模をベースにさらなる成長を加速できるようにするための施策と、この施策を後押しするデジタル化の施策の2つである。
企業規模の成長加速に向けて2024年1月に行ったのが、自動車や産業機器といったセグメント別の組織体制から製品別の組織体制への変更である。「今までは社内カンパニー制のようにセグメント別の組織体制を採用していたが、社内にある人材や技術を最大限活用することを目指して製品別の組織体制に舵を切った。これからセグメントを超えて融合していくであろう市場ニーズを捉えて、より先進的なソリューションを顧客に提供することが狙いだ」(柴田氏)という。
製品別の組織体制を強化するため、これまで各セグメントで多数いたR&Dのパートナーの中から、上位20%の先進的かつ規模の大きなパートナーにフォーカスして、より戦略的なR&Dが行える体制を構築していく方針である。また、半導体製造の前工程や後工程で利用してきたさまざまな技術についても30%削減を目標とする絞り込みを進めていくことになる。
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