三菱ふそうトラック・バスは2024年8月7日、自動追尾型のごみ収集電動車の実証事業に参加したと発表した。
環境省が2021〜2023年度に実施した「エネルギー起源CO2排出削減技術評価・検証事業のうちデジタル技術の活用等による脱炭素型資源循環システム創生実証事業」に参画し、環境省や日本環境衛生センターからの委託で、自動追尾型ごみ収集電動車を使った廃棄物処理作業でのCO2削減の実証を行った。
住宅街でのごみ収集作業では、それぞれのごみ収集場の距離が短く、ドライバーは短距離を運転しては降りてごみを投入する作業を繰り返す。実証で使用した車両はごみ収集場の間を徒歩で前を進むドライバーに追従する形で自動運転で走行するため、ドライバーが乗降する回数を大幅に減らし、作業時間の短縮やドライバーの負担軽減が図られる。ベース車両がEV(電気自動車)なので騒音や走行中のCO2排出が発生しないこともメリットだとしている。
実証実験は公道とテストコースで実施した。公道での実証は2023年11月10〜20日に行った。運転席には、緊急事態に対応するための保安員が着座した。
使用した車両はEV「eCanter」をベースに、広角カメラや超音波センサー、GNSS、Wi-Fiのアンテナなどを搭載。運転席から降りたドライバーをカメラで認識し、時速5〜7km程度の低速でごみ収集場まで自動追尾する。迅速にドライバーを検出してスムーズに発進、追尾できることを確かめた。ドライバーが端末を通じて停車してほしい位置を知らせると、GNSSを基に指定された位置に停止する。ごみの投入口とごみ集積場の位置も合わせる。自動操舵のため、車両にはごみ収集ルートも事前に設定されている。
センサーで検知可能な限りドライバーに追従し、歩くドライバーが交差点安全を確認した後で右左折も自動追尾できる。車両の周囲に歩行者が接近した場合の緊急停止や、障害物を回避しながらの走行も可能だ。広角カメラは作業者やドライバーを他の歩行者と識別する。遠隔から車両の追尾や一時停止を操作することもできる。
車両にはごみの重量や体積、投入された袋の個数を検知するセンサーも踏査しており、ごみ処理施設に収集したごみの情報を共有する。ごみ処理施設までを含めた全体の運用効率化や高度化の効果も検証した。
実証実験の結果を踏まえ、環境省とともに次世代ごみ収集電動車の開発を今後も進めるとしている。夜間のごみ収集に対応した自動追尾技術も開発する。
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