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島津製作所と信州大学、水と水素エネルギーに関する共同研究で包括的連携研究開発の最前線

島津製作所と信州大学は、水および水素エネルギーに関する共同研究と研究成果の社会実装を目的とする「包括的連携に関する協定書」を締結した。

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 島津製作所と信州大学は2024年8月5日、神奈川県内の会場とオンラインで記者会見を開き、社会課題解決に向けた共同研究と研究成果の社会実装を目的とする「包括的連携に関する協定書」を締結したと発表した。

 契約期間は5年間で、両者はこの協定書に基づき、水やエネルギーに関連する先端的技術に関するテーマの探索や島津製作所が持つ分析計測技術の活用検討、双方の研究者/技術者の育成に共同で取り組む。なお、両者による共同研究は、2025年3月に信州大学松本キャンパス(長野県松本市)に完成予定の新拠点で実施する。

「世界に通用する材料とデバイス」を目指し包括的に連携

 信州大学は、さまざまな溶媒(フラックス)を用いた人工的結晶作成方法「フラックス法」やフラックス法による高品質な結晶「信大クリスタル」などの素材開発に実績と強みを持っている。10年先のビジョンとして「アクア・リジェネレーション(ARG)分野の研究力を核に一歩先のソリューションを共創する」を掲げている。

 ARGとは、水および水由来のグリーンエネルギーを中心とする地球環境再生に関わる分野を統合した新しい学問分野で、当該分野の研究を進める拠点として2024年3月にARG機構を設置した。同大学は、2023年度に大学の研究力向上を目的とした文部科学省の補助事業「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択されている。

 同大学 ARG機構長の手嶋勝弥氏は「信州大学では現在、ARGとアースポジティブをキーワードとした研究および教育に注力している。アースポジティブは地球を守っていくという意味が込められたキーワードだ。このキーワードを支えるコア技術がARG分野で研究/開発した技術となる。ARG分野でコアとなる研究は、『燃料電池』『AI(人工知能)、データ駆動、計算科学』『水処理、水循環材料』『逆浸透膜材料、カーボン材料』『分離、濃縮、吸着、抽出』『可視光応答性、光触媒』だ。これらを活用し、水および水素に特化した研究も推進している。ARG機構でさまざまな研究を行うために今回の包括的連携を締結した」と話す。

信州大学が推進するARG構想
信州大学が推進するARG構想[クリックで拡大] 出所:島津製作所

 同大学では今回の包括的連携で、水やエネルギーに関する材料やそれを活用したデバイスを開発することに重点を置き研究などを行う。これらに島津製作所が有する精密な分析技術などを組み合わせて「世界に通用する材料とデバイスにする」(手嶋氏)という。併せて、さまざまな提案を行い人材の育成でも協力する。

 島津製作所は、多様な分析計測機器/技術を用いた、新技術/新素材の評価計測手法に強みがある。同社の中期経営計画では、ライフサイエンス分野を含むヘルスケアや、カーボンニュートラルを目指すグリーントランスフォーメーション(GX)を社会価値創生領域と定めている。

 同社は今回の包括的連携で信州大学のARG機構と、信大クリスタルなどの先端材料を使った「水の浄化/循環利用」や、次世代エネルギーとして期待される「水由来水素エネルギーの生成/利用」などに関する共同研究を検討している。

 加えて、共同研究成果を、分析計測機器で使う溶媒をリサイクルするデバイスや、エネルギー分野で重要な触媒などの効率評価システムに応用し、社会実装を推進する。

 同社 分析計測事業部SolutionsCOEヘルスケアソリューションユニット副ユニット長の増田潤氏は「当社では大きく分けて信州大学のARG事業に3つのポイントで関わる。1つ目は当社が有する各種分析/評価技術を用いて触媒や水の評価/分析を行う。2つ目は早期に共同研究を実施する『水の浄化と循環利用』や『水素エネルギーの生成』で協力する。水の循環利用と水素エネルギーの生成に関しては、光合成による直接分解を用いた水素の生成などに対し、当社の分析機器を利用して実際の触媒の劣化評価などを行い支援する。3つ目は、当社製品群のミッシングピースを埋める。というのも、当社は多彩な分析機器を展開しているが、前処理技術や溶媒リサイクル技術には取り組めていない。そのため、今回の包括的連携に基づく共同研究でこれらの技術に関する基礎技術を確立し、基礎技術を応用して前処理技術や溶媒リサイクル技術に関連する新製品の開発に生かしていきたい」とコメントした。

信州大学が推進するARG構想
信州大学が推進するARG構想[クリックで拡大] 出所:島津製作所

 手嶋氏は信州大学が今回の包括的連携で島津製作所と共同研究をスタートする経緯について、「当大学は水および水素エネルギーに関する研究を長年行っている。その中で、当大学が代表機関を務める共創の場支援プラグラムを2020年に実施した。そのプログラムの一環で小規模循環型のリビングイノベーション拠点を立ち上げる際に島津製作所に参画してもらい、接点ができた。加えて、水や水素について研究する上で、精密に分析することは重要だ。そのため、島津製作所が水や水素の分析技術で強みを持つことも共同研究を行う要因となった」と語った。

今回の記者会見のフォトセッション
今回の記者会見のフォトセッション。左から、島津製作所 分析計測事業部SolutionsCOEヘルスケアソリューションユニット副ユニット長の増田潤氏、同社 執行役員・分析計測事業部副事業部長の岡崎直美氏、同社 代表取締役社長の山本靖則氏、信州大学 学長の中村宗一郎氏、同大学 副学長の向智里氏、同大学 ARG機構長の手嶋勝弥氏[クリックで拡大] 出所:島津製作所

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