バイオ由来原料に含まれる酸素、窒素成分を短時間で検出できるGC-MSを発売:研究開発の最前線
島津製作所は、元素選択式ガスクロマトグラフ質量分析計「ELEM-SPOT」を発売した。バイオ由来原料やリサイクル原料に含まれる酸素や窒素成分を、従来法より80%以上短い時間で高感度に検出できる。
島津製作所は2024年4月8日、元素選択式ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)「ELEM-SPOT(エレムスポット)」を発売した。販売価格は3500万円〜(税別)で、国内外で年間15台の販売を目指している。
ELEM-SPOTは、同社のGC-MS技術と、フランスのTotalEnergies、ポー大学、スペインのオビエド大学が有する「バイオ燃料の含酸素成分の特定」に関する特許技術を活用して共同開発した製品だ。バイオ由来原料に含まれる酸素や窒素成分を、従来法より80%以上短い時間で高感度に検出できる。
ELEM-SPOTは、同社の主力GC-MS「GCMS−QP2020 NX」の基本性能と使いやすさを引き継ぎつつ、GC-MSと酸化炉を組み合わせた構成となっている。バイオ由来原料やリサイクル原料に含まれる化合物をGCで分離後、酸化炉で同位体酸素を用いて酸化分解し、MSで酸素や窒素だけを選択的に検出する。
検出した酸素や窒素を除去することで、バイオ燃料の品質低下に関わる触媒の品質劣化や、触媒の交換による作業効率の低下を防ぐことができる。
酸化炉を利用する際は、ソフトウェア「LabSolutions GCMS」シリーズから容易に設定できる。酸化炉を用いない通常の分析にも使用可能だ。
バイオ燃料の原料中に含まれる酸素や窒素は、製造工程で使用する触媒に悪影響を及ぼし、製造効率や品質低下の要因となる。しかし、化石燃料とは異なる未知の成分が多く含まれるバイオ由来原料やリサイクル原料において、特定の成分だけを検出する手法はこれまで確立されていなかった。
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