島津製作所の新型GC-MSは業界最小でイオン源のメンテ時間は1分、耐久性は2倍:研究開発の最前線(1/2 ページ)
島津製作所は、業界最小でイオン源のメンテ時間が1分の新型ガスクロマトグラフ質量分析計「GCMS-QP2050」を発売した。
島津製作所は2023年12月14日、本社(京都市中京区)とオンラインで記者会見を開き、新型のガスクロマトグラフ質量分析計「GCMS-QP2050」を同日に発売したことを発表した。
ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)とは、混合物試料中に含まれる化合物の定性あるいは定量を分析する装置で、GC(ガスクロマトグラフ)とMS(質量分析計)で構成される。さまざまな状態の試料をGCに導入し、試料中の化合物をクロマト分離した後、分離された化合物をMSでイオン化し、質量を分離することで定性あるいは定量できる。
従来品と比べ感度は2.5倍で耐久性は2倍
GCMS-QP2050は、2018年に発売された現行機「GCMS-QP2020 NX」と比べ、MSの主要な構成部であるイオンの検出部、質量分離部(四重極ロッド)、GCとMSのインタフェース、イオン化部(Dura Easeイオン源)、フィラメント(ロングフィラメント)を全て改良し、感度を2.5倍に高め、耐久性も2倍に向上した。
リスクの高い化合物は極めて低濃度まで定量する必要があるが、感度を2.5倍に向上しているため余裕をもって分析できる他、耐久性も2倍に高め、メンテナンスのダウンタイムを大幅に低減している。
なお、イオン化部では汚れが付着しにくくイオンの透過率を高くすることで、感度と耐久性を向上した。フィラメントでは消費電力を小さくすることで従来品よりも寿命を5倍以上に高めた。
イオン源のメンテナンスに関しては、専用治具を取り付け、ネジを2カ所外し、イオン源ボックスを交換するのみで、1分で完了する。これにより、初めてGC-MSを利用するユーザーなど、専門知識を持たない初心者でも操作でき、担当者へのメンテナンスの教育も必要ない。
搭載している操作用のソフトウェアは、既存のGCや液体クロマトグラフ(LC)と同じ操作性を持つため、GC-MSを初めて利用するユーザーでも違和感なく扱える。加えて、作業を効率化するためのサポート機能として「分析メソッドの自動作成」「ラボ装置の一元管理」「AIが解析作業をサポート」を備えている。
分析メソッドの自動作成は測定化合物が多くても最適なメソッドを自動作成でき、ラボの各装置の稼働状態、分析の終了時間、装置起動/停止の完了までの時間をリアルタイムに把握可能。AIが解析作業をサポートでは、AI(人工知能)の波形処理アルゴリズムが波形処理に要する時間を大幅に短縮し、熟練者による解析に相当する結果を提供できる。
さらに、GCMS-QP2050には1秒当たり3万ユニットのイオンをスキャンできる装置を搭載しているため、夾雑物(きょうざつぶつ)が多く含まれる試料「SAF(持続可能な航空燃料)」も高精度に分析可能で、高価な高分解能質量分析計の代替品として使える。島津製作所 分析計測事業部 MSビジネスユニットの高※1倉誠人氏は「当社の調べによればこのイオンスキャン速度は世界最速だ」と話す。
※1 高:正確には「はしご高」
サイズについては、横幅がGCMS-QP2020 NXの半分以下となる630mmで、ラボのスペースが限られている場合でも分析機器のスムーズな増設/更新が行える。「当社の調べでは業界最小のサイズだ」(高倉氏)。
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