二輪車のMT操作を自動化する「Y-AMT」、ヤマ発が「MT-09」で採用:安全システム
ヤマハ発動機は自動変速機構「Y-AMT」を開発した。2024年内に発売予定の「MT-09 Y-AMT」に搭載する。
ヤマハ発動機は2024年7月26日、自動変速機構「Y-AMT」を開発したと発表した。2024年内に発売予定の「MT-09 Y-AMT」に搭載する。
Y-AMTはクラッチレバーとシフトペダルをなくした新開発の自動変速機だ。2006年に開発した二輪車用自動MT「YCC-S」を発展させ、より高いスポーツ性と利便性を両立させた。シフト操作を手元のレバーに集約することで、より直感的なギアチェンジを可能にするという。クラッチやシフトペダルの操作から解放しながら、二輪車を操る楽しさや人機一体感の向上につなげる。
Y-AMTには、ハンドシフトによるMTモードと、変速を自動化するATモードを備える。MTモードでは、アクセルを開けたままシフトレバーを操作するだけで、エンジン性能を生かした加速が得られるとしている。変速ショック抑制によりコーナリング中の安定感が向上し、シフトペダル操作が不要になることで下半身でのホールド感も増す。ライディングポジションの自由度向上にも貢献するという。
ATモードでは車速やアクセル開度に応じて自動的に最適なギアが選択されるため、ライダーはアクセルとブレーキの操作のみを行う。頻繁なギアチェンジが必要だった市街地での走行や、ロングツーリングなどでの負担を軽減する。
街中や高速道路、ワインディングロードなど道路環境の違い、ライダーのコンディションや天候の変化などに合わせて、手元の切り替えボタンでモードを選択できる。いずれのモードも素早いレスポンスが特徴で、エキスパートレベルの変速を安定して実現するとしている。
Y-AMTは、従来の左手によるクラッチ操作と左足によるシフト操作をアクチュエーターが担い、ギアチェンジを自動化する。アクチュエーターのユニット重量は約2.8kgと軽量かつコンパクトな設計とし、ベース車両のスタイリングやハンドリングへの影響を最小限にした。また、ベースとなるMT車の変速機構に大きな変更は加えないため、MT車らしいダイレクトな変速フィーリングなどは引き継げるという。
ギアチェンジではECU(エンジンコントロールユニット)とMCU(モーターコントロールユニット)が連携する。ECUはシフトアップ時のエンジンの点火や噴射、シフトダウン時の電子制御スロットルなどをコントロールする。MCUは最適なシフト操作とクラッチ操作をアクチュエーターに指示する。
高回転時にはクラッチを完全に切らずに状況に応じた最適な制御を行う。シフトロッド内へのスプリング挿入による変速時間の短縮、エンジン制御とクラッチ制御の協調などにより、素早いギアチェンジと変速ショックの低減を両立。ライダーの意思に沿った自然な変速フィーリングを実現したという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ヤマ発がフォーミュラE向け電動パワートレインを開発、投入は2025年
ヤマハ発動機は英国のレーシングカー開発会社Lola Carsと複数年のテクニカルパートナーシップ契約を締結し、電気自動車のレースであるABB FIA フォーミュラE世界選手権向けの電動パワートレインを共同開発する。 - ヤマ発が考える、二輪車の楽しさと四輪車の安定性のベストバランス
四輪車の開発を凍結したヤマハ発動機から、“複数のタイヤがあるモビリティ”のコンセプトが再び登場した。 - ホンダが二輪車用電子制御クラッチ、手動より違和感のないスムーズさ
ホンダは二輪車向けの電子制御クラッチ「E-Clutch」を発表した。 - 動力を断続するクラッチは回転してアッチッチ
運転ビギナーを悩ませるクラッチには、超過酷な動作に耐えるための工夫がたくさんだ。機能と耐久性、どちらも譲れないぞ。 - 運転を楽にするAT変速ってどうなってるの?
「面倒なことを楽にしたい!」という人間らしい欲求をかなえる機構がAT。だけどその機構はとても複雑だ。 - 2030年の動力伝達技術の在り方とは、自動車メーカーらが技術研究組合を発足
自動車メーカー9社とアイシン・エィ・ダブリュ、ジヤトコで結成した「自動車用動力伝達技術研究組合」が、共同研究組織として始動する。事業費は約2.6億円で、組合員各社が派遣する技術者合計100人が活動する。