ヤマ発がフォーミュラE向け電動パワートレインを開発、投入は2025年:電動化
ヤマハ発動機は英国のレーシングカー開発会社Lola Carsと複数年のテクニカルパートナーシップ契約を締結し、電気自動車のレースであるABB FIA フォーミュラE世界選手権向けの電動パワートレインを共同開発する。
ヤマハ発動機は2024年3月28日、英国のレーシングカー開発会社Lola Cars(ローラ)と複数年のテクニカルパートナーシップ契約を締結し、電気自動車(EV)のレースであるABB FIA フォーミュラE世界選手権向けの電動パワートレインを共同開発すると発表した。2025年(シーズン11)の1戦目からの実戦投入を目指して開発を進める。
フォーミュラEの参戦車両は、部品や車体の70%をFIAが供給するが、駆動用モーターやインバーター、ギアボックスなどは各チームで開発できる。ヤマハ発動機はこれらの電動パワートレインを制御ソフトウェアも含めて開発し、ローラがレーシングカー開発の知見を生かして車体として仕立てる。フォーミュラEに投入する電動パワートレインに対応するための基礎開発や先行開発は以前からヤマハ発動機で行ってきた。
パワートレインを自社開発していないカスタマーチーム向けに車体として提案し、採用を目指す。詳細は明かされなかったが、採用のめどはつけつつある様子。2024年のシーズン10は7月に最終戦を迎えるため、夏には来シーズンを“ローラ ヤマハ”の車両で走るチームが明らかになりそうだ。
ヤマハ発動機とローラの車両開発をフォーミュラEも歓迎した。写真左からフォーミュラEホールディングスの共同創設者兼チーフチャンピオンシップオフィサーのアルベルト・ロンゴ氏、ヤマハ発動機の丸山平二氏、Lola Cars モータースポーツディレクターのマーク・プレストン氏、フォーミュラEホールディングス CEOのジェフ・ドッズ氏[クリックで拡大]
フォーミュラEに対するヤマ発の期待
フォーミュラEの電動パワートレインは最高出力が350kWで制限されるが、エネルギー回生やエネルギーの出し方/取り方といったエネルギーマネジメント技術がカギを握る。また、モーターの方式や熱マネジメント、冷却、軽量化、制御ソフトウェアなどでも差別化を図ることができる。
ヤマハ発動機の事業領域を考えるとフォーミュラEで要求される高出力モーターがそのまま生かせるわけではないが、モータースポーツならではの高水準の精度や効率、小型化などは出力の低いモーターにも応用できるという。フォーミュラEで得た知見は、小型二輪を始めとするヤマハ発動機の製品全般の電動化に展開したい考えだ。
フォーミュラEはバッテリーも各チーム共通だが、その環境で電動パワートレインの性能やエネルギーマネジメント技術を問われることは、ヤマハ発動機の事業領域にも通じるという。「われわれは四輪車のメーカーに比べると、電動化された製品で使う電池は小さい。(大手四輪車メーカーのように自社開発ではなく)既にあるバッテリーを使うことになるだろう。そのときに重要なのは、バッテリーの持つエネルギーをいかに無駄なく使い切るかという点だ。フォーミュラEのエネルギーマネジメントは世界最高峰の領域にあるので、参入することがわれわれの市販製品にも生きると判断した」(ヤマハ発動機 取締役 常務執行役員 丸山平二氏)。
フォーミュラE向けの電動パワートレイン開発は基本的に日本と英国で行う。ヤマハ発動機では技術・研究本部とAM開発統括部が開発に参加する。英国での開発には、日本から技術者を出張させる。ヤマハ発動機のエンジニアがレースに帯同できるかどうかは、供給先のチームが決まり次第相談するという。
ローラは電動化や水素、持続可能な燃料といった脱炭素技術に注目しており、ヤマハ発動機とのパートナーシップで電動化技術を強化する。
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