積水化学が先端半導体向け材料の生産能力増強、台湾に評価/分析拠点も新設:工場ニュース
積水化学工業は、武蔵工場(埼玉県蓮田市)における高接着易剥離UVテープ「SELFA」の生産能力増強および同製品を含む半導体関連材料の評価/分析が可能なR&D拠点を台湾に新設することを決定した。
積水化学工業(積水化学)は2024年7月25日、同社の高機能プラスチックスカンパニーが武蔵工場(埼玉県蓮田市)における高接着易剥離UVテープ「SELFA」の生産能力増強および同製品を含む半導体関連材料の評価/分析が可能なR&D拠点を台湾に新設することを決定したと発表した。
投資額は総額約50億円。SELFAの生産能力を増強した武蔵工場の稼働時期は2027年度上期(4〜9月)で、台湾半導体材料R&D拠点の稼働時期は2025年4月を予定している。
投資の背景
SELFAは、高い接着性とUV照射による易剥離性を両立させたテープで、テープと被着体間にガスを発生させ、密着力をゼロにして簡単に剥がせる。これにより、薄く研磨されたウエハーなどでもダメージなく加工することが可能になる。これらの優れた特性は、AI(人工知能)や高速通信向けの最先端半導体や車載向けパワー半導体向けを中心に顧客より高く評価され、半導体市場の発展に貢献している。同市場は、2030年に2023年比の約2倍の1兆ドル規模に達すると積水化学工業では予測している。
今後、継続的にSELFAの需要拡大が見込まれることから、安定的な供給体制確立と高度な品質要望に応えるため、生産能力増強と品質管理レベルの強化を図る。
また、重要顧客をはじめ半導体関連企業が集積し、最先端の技術開発を積極的に行っている台湾新竹市に、R&D拠点を新設することを決定した。これにより、顧客の近接地にて評価/分析を行うことが可能となる他、高度化が進むニーズの先取りや対応強化を図り、SELFAをはじめとした各種半導体材料の新規開発の加速、採用拡大を目指す。
加えて、エレクトロニクス関連事業における半導体分野拡大に向けて、台湾の半導体材料R&D拠点を皮切りに、韓国/米国などへの拠点展開も検討していく。
武蔵工場と台湾半導体材料R&D拠点の概要
武蔵工場の設立は1962年7月1日で、所在地は埼玉県蓮田市黒浜3535。生産品目はSELFA、各種テープ製品、発泡ポリオレフィン、耐火材料。
台湾半導体材料R&D拠点の所在地は台湾新竹市で、半導体材料関連製品(高接着易剥離テープ、層間絶縁材など)の評価/分析および設計開発を行う。運営主体は台湾積水化学股份。
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