低出力レーザーによる光濃縮で迅速かつ高感度なウイルス測定が可能に:医療技術ニュース
大阪公立大学は、光濃縮技術を取り入れた「光誘導イムノアッセイ技術」を開発した。微量で低濃度なサンプルでも約5分で正確なウイルス計測が可能だ。
大阪公立大学は2024年6月25日、光濃縮技術を取り入れた「光誘導イムノアッセイ技術」を開発したと発表した。微量で低濃度なサンプルでも、約5分で正確なウイルス計測が可能だ。迅速かつ高感度にタンパク質を検出できるため、感染症だけでなく、がんや認知症の早期診断への貢献も期待される。
イムノアッセイは、抗原抗体反応を検出原理とする検査手法だ。今回の研究では、500nmという微細なボウル状構造を持つ、光濃縮基板(ナノボウル基板)作製した。
具体的な適用例として、疑似ウイルスとして新型コロナウイルス由来のスパイクタンパク質の定量評価を評価した。まず、スパイクタンパク質に選択的に結合する抗体を修飾したナノ粒子をナノボウル基板上にコーティングした。コーティングは、レーザーポインターと同程度の微弱レーザーを1分照射することで完了する。
次に、スパイクタンパク質を被覆した蛍光ナノ粒子の分散液を滴下し、同出力のレーザーを4分間照射し、基板上に濃縮した。10秒間の洗浄後、蛍光イメージングにより面積測定をして、疑似ウイルス量を定量評価した。その結果、疑似ウイルスを検出できること、また2回目のレーザー照射なしの場合よりも10〜20倍高感度のアッセイが可能であることを実証した。
(a)作製したナノボウル基板の写真と電子顕微鏡像。(b)(c)疑似ウイルスとスパイクタンパク質修飾無しのナノ粒子の濃度をそれぞれ変化させて光濃縮後の蛍光イメージを観察。(d)赤色の蛍光面積の濃度依存性[クリックで拡大] 出所:大阪公立大学
従来のイムノアッセイでは、抗体のコーティングに15〜18時間を要し、測定時間も5〜6時間かかっていた。今回、迅速かつ高感度なタンパク質検出が可能になったことで、さまざまな疾患の早期発見、食品中のウイルス計測、河川や海洋中の有害ナノ物質の検出など、幅広い分野への応用が期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- AI医療機器やGCP査察を巡る多国間連携と働き方改革、日本のPMDAの対応は
本連載第104回で米国、カナダ、英国のAI医療機器指導原則を取り上げたが、それと並行して国境を越えた規制監督業務DXの取り組みも進んでいる。 - 5Gワイドを用いた遠隔ロボット手術支援の実証実験に成功
神戸大学らは、「5Gワイド」を活用し、無線の混雑環境下で遠隔ロボット手術を支援する実証実験に国内で初めて成功した。 - 生きた皮膚を持つロボットの顔を開発
東京大学は、培養皮膚組織を人工物へスムーズに固定するアンカリング手法を開発し、細胞由来の生きた皮膚を持つ顔型のロボットを作製した。ソフトロボットの開発や美容、医療分野での応用が期待される。 - 過敏性肺炎の原因カビに対する帯電微粒子水の殺菌効果を確認
パナソニックは、過敏性肺炎の原因カビであるトリコスポロンに対して、ナノイーの殺菌効果を確認した。過敏性肺炎の原因の7割を占める病原カビ3種全てに、殺菌効果を証明したことになる。 - 超加工食品のエネルギー摂取量が多い子どもほど、食事の質が低いことが明らかに
東京大学は、日本人の子どもの食事記録データをもとに超加工食品の摂取量を調査し、超加工食品からのエネルギー摂取量が多い人ほど、食事の質が低いことを明らかにした。 - スマートフォンをぐるぐる回して手足の器用さを定量的に測定する技術
NTTは、スマートフォンを手に持つか足に装着し、ぐるぐると回転させて運動のばらつきを定量的に評価し、手足の器用さの度合いを見える化する技術を開発した。