高い制動力と耐摩耗性を備えたEV向けディスクブレーキパッドを開発、2026年量産化:材料技術
レゾナックは、電気自動車の電動ブレーキシステムへの採用を目指し、ノンアスベスト系摩擦材を用いた高性能ディスクブレーキパッドを開発した。高い制動力と耐摩耗性を備える。
レゾナックは2024年7月3日、電気自動車(EV)の電動ブレーキシステムへの採用を目指し、ノンアスベスト系摩擦材(NAO材)を用いた高性能ディスクブレーキパッドを開発したと発表した。制動力と耐摩耗性に優れる。
同ディスクブレーキパッドは、アスベスト(石綿)や鉄を原材料として使用しておらず、ブレーキの際の摩耗が少ないため、環境負荷が低く静粛性が高い。素材の特性を考慮して配合を工夫するなど、欧州で主流のロースチール系ブレーキパッドに匹敵する高いブレーキ性能を得た。ガソリン車と比べて車体重量が重いEVでの使用においても、高い制動力を安定して発揮する。
また、耐摩耗性にも優れる。燃費や排出ガス測定の国際基準WLTP走行モードを模したブレーキ台上の評価では、既存の欧州ロースチール系ブレーキパッドと比較して摩耗粉排出量を30%以下に削減した。
自動車業界では、カーボンニュートラル推進のためEVシフトが急速に進んでおり、2035年には世界の新車販売のうち、EVが半数を占めるようになると言われる。EV向けのブレーキパッドは、車体重量が増加することでブレーキへの負荷が大きくなることに加え、回生協調ブレーキとの適合性も重要となる。
さらに、2028年からは欧州で新環境規制「EURO-7」の適用が開始し、規制対象にブレーキの摩耗による粉じんも含まれる。そのため制動力が高く、かつ摩耗の少ないブレーキパッドが強く求められている。
同社は同ディスクブレーキパッドの2026年の量産化を目標とし、欧州Tier1ブレーキシステムメーカーにサンプルを提供して、評価を進めている。
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