3次元物質から2次元強誘電体の作製に成功、強誘電デバイスの開発に貢献:研究開発の最前線
京都大学は、3次元物質の二酸化ハフニウムジルコニウムから、厚さ1nmの2次元強誘電体を作製することに成功した。数nmまで極薄化した3次元強誘電体からは困難とされていた、2次元物質を作製できた。
京都大学は2024年6月26日、3次元物質の二酸化ハフニウムジルコニウム(Hf0.5Zr0.5O2、HZO)から、厚さ1nmの2次元強誘電体を作製することに成功したと発表した。ファインセラミックスセンター、名古屋大学との共同研究による成果で、数nmまで極薄化した3次元強誘電体からは困難とされていた、2次元物質を作製できた。
研究グループはこれまでの研究で、ペロブスカイト型マンガン酸化物La0.7Sr0.3MnO3(LSMO)上に、HZOがエピタキシャル成長することを発見している。今回の研究では、LSMOが希塩酸水溶液に溶解するのに対し、HZOはほぼ溶解しないことに着目した。
チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)基板上にHZOとLSMOの積層構造をつくり、基板ごと希塩酸水溶液に投入し、HZOと基板の間にあるLSMO層だけを溶解して選択的に削除した。その後、HZO層を基板から取り外してHZOメンブレン結晶を得た。
結晶格子2個分に当たる1nm厚のメンブレン結晶を分析したところ、強誘電相である菱面体晶の結晶構造が保持されていた。また、室温で面直方向に13μC/cm2の自発分極を持つことも確認。これらの成果から、3次元物質のHZOから2次元強誘電体を作製できることが分かった。
今回開発した2次元強誘電体は、磁性体や超伝導体などの機能性物質上に転写が可能だ。強誘電体と機能性材料を融合させた、新しい強誘電デバイス開発につながる。また、メンブレン結晶作製技術はHZO以外の3次元物質にも適用でき、同技術による2次元材料の開発が期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- CO2を原料としたバイオものづくりの推進に向け、フォーラムを設立
製品評価技術基盤機構は、CO2を原料とした有用物質生産に使用する微生物とその関連情報を企業が先行利用できる連携の場「グリーンイノベーションフォーラム」を立ち上げた。 - ノルコロール誘導体を用いて、半導体特性を示す新たな液晶材料を創製
立命館大学らは、半導体特性を示す新たな液晶材料を創製した。脂溶性アルコキシ鎖を持つ芳香環を2カ所に導入したノルコロール誘導体を合成し、液晶状態の発現と高い電気伝導性を発見した。 - 京大にカーボンニュートラル向けの先進共同研究部門を開設
京都大学と大阪ガスは、2050年カーボンニュートラルに向けたメタネーション技術などの基礎研究を行う産学連携共同研究の拠点として、産学共同研究部門「カーボンニュートラルに向けた先進共同研究部門」を京都大学桂キャンパス内に同年4月に設置する。 - 世界最小レベルの特性オン抵抗の酸化ガリウムSBD、月産100万個の量産体制構築
FLOSFIAは、「TECHNO-FRONTIER 2023(テクノフロンティア2023)」で、独自の成膜技術「ミストドライ法」やこの方法を用いて結晶成長させた酸化ガリウムのパワーデバイスを披露した。 - コアラはなぜ猛毒のユーカリを食べられるのか、全ゲノム配列の解読から明らかに
京都大学は、オーストラリア博物館が指揮する「コアラゲノム・コンソーシアム」に参加し、同コンソーシアムがコアラの全ゲノム配列の解読に成功したと発表した。