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アクセルペダルを踏んでからクルマが走り出すまで、何が起きている?いまさら聞けないクルマの仕組み(2)(2/2 ページ)

今回はアクセルペダルを踏んでから実際に自動車が走り出すまでの流れについて、パワープラントごとの基礎的な解説から、電子制御やモーター制御の概念的な話まで触れていきます。

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出力制御の基本:ブラシレスDCモーター

 近年は内燃機に加えて電動機も普及してきました。ブラシレスモーターの説明は避けて通れないでしょう。ともすると「単純」といわれることもあるブラシレスDCモーターですが、実際は内燃機に負けず劣らず複雑な経路でモーターを回しています。

 具体的には(1)アクセルペダルを踏む、(2)ECUが必要な電流の流量を推定しインバーターに要求する、(3)インバーターでスイッチング素子を制御し電流を流す、(5)モーター出力増加、という形です。


モーター制御の概要[クリックで拡大] 出所:日産自動車

 近年「内燃機よりモーターの方がレスポンスに優れる」といわれるのは、単純だからではありません。内燃機関は排ガス基準対策のために全速で応答できないのに対し、モーターはそれを気にする必要がないため全速で応答できるのです。この点がレスポンスに対して大きく影響しています。

アクセルペダルの踏み具合は何を伝えているのか

 上記では主なパワープラントの基本的な制御の考え方を説明しました。ここでは、最近の自動車にとってのアクセルペダルを簡単に説明しようと思います。結論から言って、「自動車に対して欲しい加速力を伝える」のが最近のアクセルペダルの役目です。

 ECUはアクセルペダルの踏み込み量や踏み方を検出し、必要加速力を推定してパワープラントに具体的な指示を出すのです。つまり、必要加速力を推定する部分まではパワープラントによって違いはなく、その先の具体的な指示を行う所からパワープラントごとの特徴が現れるともいえます。

 単純な踏み込み量だけではなく、その踏み込み量に到達するまでの加速度も情報として伝わります。この情報から、その瞬間の出力にとどまらず、他の走行に関わるシステムの設定さえ変更することもあるのが今のアクセルペダルであり自動車なのです。

なぜHEVは複雑でEVはシンプルといわれるのか

 なぜHEV(ハイブリッド車)が複雑でEVがシンプルといわれるのか。それは実際、「パワープラントを跨いだ協調作業が発生するかどうか」が大きな分かれ目となる……といっていいでしょう。HEVは、モーター(バッテリー)とエンジンをどのように役割分担して走るかの選択が常に発生しているので、その分制御が複雑だといわれるのです。

 HEVやEVで使用されるトラクションモーターは一般的にブラシレスDCモーターですが、これには制御にインバーターが使用されます。EVの場合、加速時はバッテリーから電力を取り出してモーターを駆動し、減速時は逆のルートで戻すという動きです。

 一方、HEVの場合、バッテリー持ち出し電力のみで加速するのか、バッテリーとエンジンで発電した電力を両方使用して加速するのか、はたまたエンジンの発電のみで加速するのか、エンジンのみで加速しながらバッテリーを充電するのか。状況によって、エンジンで発電した電力とバッテリー持ち出しの電力割合を協調制御することになります。このパターンの区分けを制御に組み込まなければいけません。

 さらに、エンジンで駆動系を直接駆動できるかどうかを選択できるシステムの場合、上記の選択肢中でエンジンの発電が関わる項目全てに「エンジンで直接タイヤを駆動するか否か」の要素も加わります。こうやって大ざっぱに見ても、HEV制御の複雑さが良く分かりますね。

→連載「いまさら聞けないクルマの仕組み」バックナンバー

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