脳は、決断の迷いも含めて運動を学習する:医療技術ニュース
情報通信研究機構と本田技術研究所は、決断を迷った運動と迷わなかった運動は、脳が異なる運動として学習することを発見した。決断の内容だけでなく、決断に至る過程が運動として記憶されることを証明するものだ。
情報通信研究機構(NICT)は2024年6月13日、本田技術研究所と共同で、決断を迷った運動と迷わずに行う運動は、脳は異なる運動として学習することを発見したと発表した。決断の内容だけでなく、決断に至る過程が運動として記憶されていることを証明するものだ。
例えば、サッカーのPK戦では、選手がゴールキーパーの動きを見て確信を持ってボールを蹴る場合もあれば、動く方向に確信が持てないまま蹴ることもある。同じゴールの右隅にボールを蹴っても、脳内では「決断に至る過程」とその後の「運動」がセットで学習と記憶がされており、脳から同じ指令が出ているわけではないことが分かった。つまり、空のゴールにうまく蹴る練習をしても、ゴールキーパーが存在して迷いが生じる状況下では、同じように蹴られるとは限らないことを意味する。
今回実施した実験では、装置の前にロボットハンドルを握って座った被験者が、画面中央に表示された多数の点が全体として右に動いているのか左に動いているのかを判断し、その判断と同じ方向にハンドルを動かす。
実験1は、点の動きが簡単に判断できる「迷いなしグループ」と、難しい「迷いありグループ」に分けて実施した。ハンドルを動かす際は、運動を邪魔する力がかかるようになっており、その力に対して真っすぐにハンドルを動かすことを学習した。
どちらのグループも同程度に邪魔をする力に対抗して運動できるようになったが、点の表示を学習したものと逆にすると、うまく対応できなかった。このことから、運動と事前の「迷い」をセットで学習したことが示唆された。
実験2では、同一被験者に対し、迷いなく判断できる表示では反時計回りの方向に邪魔をする力をかけ、迷わせる表示のときは時計回りの方向に邪魔する力をかけた。その結果、被験者は迷いのない判断後の運動と、迷いのある判断後の運動を同時に学習できるようになった。
研究の成果から、さまざまな意思決定の状況に応じた運動を事前に学習することが必要であることが示唆された。スポーツなどの新たな指導方法につながることが期待される。
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