アイトラッキングを利用した新しい自動視野計の性能を評価:医療技術ニュース
京都大学は、アイトラッキングを利用する新しい自動視野計を開発した。従来式のハンフリー自動視野計と比較した結果、新しい視野計は従来式と遜色のない性能を持つ上、200秒以内で軽度視野障害の検査を完了した。
京都大学は2024年5月31日、アイトラッキングを利用して視野を測定するヘッドマウント型の自動視野計(GAP)と、一般的に使用されているハンフリー自動視野計(HFA)の比較結果を発表した。
GAPは、京都大学とファインデックスが共同開発した、新しい測定原理による自動視野計だ。有効な視野内に提示された「見える」指標に対しては、視線は直線的に移動するが、視野欠損部に提示された「見えない」指標には直線的な視線移動が見られないことを利用している。「見えているかどうか」は、AI(人工知能)がアイトラッキングで得られた視線の動きをもとに判定する。
同大学医学部附属病院の眼科でHFAを用いて検査する患者47人について、HFAとGAPの検査結果を比較した。その結果、相関係数は0.811と良好で、平均的な検査時間に有意な差は見られなかった。
しかし、200秒以内に検査が完了したのはGAPのみで、これらの患者は視野障害の程度が軽度だった。このことから、視野障害が軽い患者では、検査時間の短縮にGAPが有効であることが明らかとなった。
また、HFAとGAPの検査結果に違いがある場合の視線の動きを検証すると、指標に対して直線的に移動する、つまり「見えている」ことを示す移動が70.2%を占めた。つまり、実際には見えており、HFAよりGAPの計測値の方が正しい可能性が示された。
従来法のHFAは、検査中に中心の一点を見続けながら、周りに提示される光が見えたらボタンを押下するという検査手法だ。一方、GAPは暗室でなくてもベッドサイドで測定でき、一点を見続ける必要がないため、患者は楽に検査を受けられる。GAPは視線の動きの事後検証が可能で、客観性があり透明性が高い検査結果が得られること、ヘッドマウント型で400gと軽く、持ち運びしやすいという利点もある。
今回の比較調査により、GAPはHFAと遜色ない性能を持つことが示されたことから、今後、自動視野計として普及していくことが期待される。また、ソフトウェアが充実すれば、眼科以外のさまざまな検査にも適用範囲が広がることが見込まれる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- テルルを含む穀類や豆類の摂取と高血圧との関係性を発見
名古屋大学は、ミネラルの1種テルルの体内濃度が高い人ほど、高血圧の有病率が増加することを明らかにした。穀類と豆類の摂取頻度が高いほど、尿中のテルル濃度が高いことが示された。 - ICT先進国エストニアのバイオバンクとクラウドネイティブ技術
本連載第30回および第96回で、デジタルヘルス先進国エストニア発のICTの事業展開を紹介したが、今回はバイオバンクの取り組みを取り上げる。 - 血液バイオマーカーにより、超早期段階の脳アミロイドPET検査結果を予測
東京大学は、血液バイオマーカーを組み合わせることで、アルツハイマー病に特徴的な脳内アミロイドβの蓄積を検出するPET画像の結果を、超早期段階でも正確に予測できることを明らかにした。 - 独自のイメージング技術を搭載した、内視鏡向け超音波診断装置を発売
オリンパスとキヤノンメディカルシステムズは、超音波内視鏡システムにおける協業合意に基づき、内視鏡向け超音波診断装置「Aplio i800 EUS」を、日本国内と欧州、オセアニア地域で順次、販売開始する。 - 国内の医用画像関連システム市場、2022年度は前年度比4.3%減
矢野経済研究所は、国内の医用画像関連システム市場の調査結果を発表した。2022年度の国内市場規模は573億1900万円で、2023年度以降は600億円前後の横ばい傾向での推移を予測する。 - プロバイオティクスによる菌血症の発症を確認
大阪大学は、大阪大学医学部附属病院で発生した菌血症患者を後方視的に調査し、入院患者5例にプロバイオティクス由来のClostridium butyricumという細菌が存在していることを確認した。