血液バイオマーカーにより、超早期段階の脳アミロイドPET検査結果を予測:医療技術ニュース
東京大学は、血液バイオマーカーを組み合わせることで、アルツハイマー病に特徴的な脳内アミロイドβの蓄積を検出するPET画像の結果を、超早期段階でも正確に予測できることを明らかにした。
東京大学は2024年5月23日、血液バイオマーカーを組み合わせることで、アルツハイマー病に特徴的な脳内アミロイドβ(Aβ)の蓄積を検出するPET画像の結果を、超早期段階で正確に予測できることを発表した。スウェーデンのコホートでも結果は再現され、普遍性が示された。新潟大学らとの国際共同研究における成果だ。
今回の研究は、日本人のJ-TRCコホート474人の血液検体を対象に実施。J-TRCコホートでは、無症状だがAβの蓄積が始まっている発症の前駆時期(プレクリニカル期)や、認識機能の低下はあるが認知症に至っていないプロドローマル期(MCI期)の人を診断、追跡し、予防や治療法の開発を目指している。
血液バイオマーカーとして使用したのは、Aβ42、Aβ40、スレオニン217リン酸化タウ(p-tau217)だ。これらを定量化して臨床データと組み合わせると、脳アミロイドPET画像結果を高効率で予想できることを確認した。認知機能が正常な場合では、p-tau217とAβ42、p-tau217とAβ42/Aβ40の比などの組み合わせで予測能が向上した。
また、各バイオマーカーに、年齢や性別、APOE遺伝子型などの臨床情報を組み合わせてモデル化すると、PET結果の予測能は向上した。
これらの結果は、スウェーデンのBioFINDERコホートでも同様に示された。このことから、血漿Aβとp-tau217の組み合わせによる脳アミロイドPET予測能は、人種やコホートを超えた再現性が実証できた。
日本でも抗Aβ抗体薬の臨床使用が始まり、脳内Aβ蓄積評価の重要性が高まっている。今回の成果は、早期段階の診断の精密化と効率化に有効だと考えられ、アルツハイマー病の予防や治療への応用が期待される。
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