3列目へのこだわり
インテリアは、視覚的ノイズの少ないシンプルな構成とし、ストレスなく操作ができ、使う人がゆったりとした気持ちになれる空間を目指したという。7型TFT液晶メーターは、速度や現在時刻など、必要最小限のシンプルな表示とし、見やすさと分かりやすさを重視した。センターパネルは、運転に関する操作スイッチと空調などのスイッチを左右でゾーニングして配置することで、運転時も直感的にスイッチ類を操作できるようにしたという。
運転席はインホイールメーターの採用などにより、水平基調でノイズレスなダッシュボードを実現。すっきりとした前方視界を提供するとしている。また、ベルトラインを水平基調とするとともに、前方から側面を連続性のある視界とした。さらに3列目席は、リアクオーターウィンドウを四角基調に変更し、先代モデルよりも窓の面積を拡大するなど、全席で明るく開放感のある空間を目指した。
室内は1列目のシート形状を工夫し、ウォークスルーや2列目シートへのアクセス性を向上させるなどして使い勝手を高めたという。2列目シートの膝まわりのスペースを先代モデルより30mm広げた。ヘッドレストや肩のボリュームを削減することで、ウォークスルーでの移動や、振り向いて2列目の子どもの世話をするなどの動作もしやすくした。室内空間の一体感を高めるため、1列目から3列目までスムーズに移動できることや、会話のしやすさにこだわった。
3列シートモデルでは、3列目シートの座り心地を維持しながらシート構造部の軽量化と薄型化を図った。シート跳ね上げ時の固定位置を低く垂直にすることで、荷室への張り出しを最小限にした。シートをたたんだ際のシート間距離を現行より160mm拡大し、荷室の使いやすさや自由度を高めた。背が低い女性にはシートをたたむ際の動作が難しいという声を受けて改善したという。後席用クーラーの設置、リアクオーターウィンドウの拡大など、3列目シートの過ごしやすさも向上させている。
コンパクトなミニバンには他社の競合モデルが待ち構えているが、新型フリードのチーフエンジニアであるホンダ 電動事業開発本部 BEV開発センター 統括LPLの安積悟氏は「戦い方は違う」という。「フリードは3列目の快適性を重視している。どの座席でもしっかり座れることがミニバンの価値だとみているからだ。他社の競合モデルは価格重視で選ばれており、3列目は予備と位置付けられている。他社と同じ戦い方で価格競争はしない」(安積氏)。
電動車100%とミニバン
ホンダは2030年までにEVとHEV(ハイブリッド車)で電動車比率を100%にしていく計画だ。当初はフリードをハイブリッド専用モデルにすることも検討したが、今回のフルモデルチェンジでは、子育て中でクルマにかける費用を抑えたいユーザーに向けて、ガソリンエンジンモデルを残した。
次のフルモデルチェンジの時期によっては、電動車比率100%がフリードでも避けられない。ミニバンとのEVの親和性について、チーフエンジニアの安積氏は次のように述べた。
「EVのメリットとミニバンの価値を両方見てもらえればいいが、現時点ではEVにはデメリットもある。ミニバンには幅広いユーザーがいて、“レジャーの遠出も日常の移動もミニバン1台で”というユーザーは少なくない。遠出ではEVのデメリットが解消しきれていないのではないか。遠出でアクティブに使われることを考えると、今はまだHEVの方がメリットがある。次のフルモデルチェンジでは電動化がさらに加速しているだろう。ガソリンエンジンが残るのかどうか、どの程度残るのかはまだ読みにくい。HEV比率が高いことは実感しているので、HEVとEVの組み合わせの大きさがある程度見えてくるのではないか」(安積氏)
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