アドバンテック日本法人に新社長が就任、直方事業所のモノづくり革新を加速へ:製造マネジメントニュース
アドバンテックが大阪市内でパートナー向けイベント「Partner Conference 2024」を開催。基調講演に、アドバンテックの新社長に就任した吉永和良氏が登壇し、同社の事業戦略について説明した。
アドバンテックは2024年6月14日、大阪市内で同社のパートナー向けイベント「Partner Conference 2024」を開催した。基調講演には、同月にアドバンテックの新社長に就任した吉永和良氏が登壇し、同社の事業戦略について説明した。
新社長の吉永氏は、IBMの戦略コンサルティング ダイレクタを務めるなど、日本をはじめ台湾、中国、ベトナムなどアジアを中心に企業経営に関わる業務に携わってきた。台湾のアドバンテック本社ではグローバル・コーポレート戦略本部のVPを務めており、今回の日本法人の新社長就任によって兼務となる。
アドバンテックは、世界シェアが42.5%でトップに立つ産業用PCのリーダー企業として知られる。2023年に創業40周年を迎えた同社は、2030年の売上高を2023年比で2.5倍の50億米ドルに伸ばす成長戦略を推進しているところだ。
吉永氏は「アドバンテックは、台湾の産業用PCメーカーから、世界のエッジコンピューティングプロバイダーへの移行を図っているところだ。産業用PC市場は2022〜2031年の年平均成長率が5.48%にとどまる一方、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)がけん引するエッジコンピューティング市場の同期間の年平均成長率は30%になる見込みだ。10年間で10倍になるわけで、この成長市場を捉えられれば、2030年の50億米ドルという売上高目標も夢ではない」と語る。
アドバンテック第3の開発/製造拠点となる直方事業所が果たす役割
2030年の目標達成に向けた施策としては、グローバルブランドや人材、風土改革を進める「ABC(Advantech Branding & Communications)」、多品種少量生産に対応可能な生産体制を確立する「APS(Advantech Production System)」、産業用PCをはじめとするハードウェア中心からソフトウェアやサービスの販売を増やしていく「ASC(Advantech Software Center)」の3つがある。
2番目のAPSの施策において、日本法人は重要な役割を果たしている。これまでアドバンテックは台湾と中国にのみ生産拠点を置いていたが、顧客のニーズに細かく対応する地産地消を目指すAPSでは新たに現地に生産拠点を展開する必要がある。アドバンテックは、2019年にオムロンでEMS事業などを行っていたオムロン直方を買収しており、現在は直方事業所(福岡県直方市)として運営している。この直方事業所は、台湾と中国以外で初となるアドバンテックの第3の開発/製造拠点であり、今後のAPSの施策を横展開する上でのモデルケースとして期待されているのだ。
吉永氏は、日本法人の2030年の売上高目標として、グローバルの売上高目標50億米ドルの10%に当たる5億米ドルを掲げた。これは、現在の売上高から約3倍の成長となる。「利他と共創の精神にのっとってパートナーとの協業をさらに拡大しながら、台湾で生産した製品を大量販売するモデルに替えて、日本の顧客のニーズに合わせて日本で開発を行い、それらを日本国内だけでなく世界にも売っていく。直方事業所への投資も加速し、“アドバンテック”を体現するような工場に育てる。さらに、国内でのM&AやJVも推進する。グローバル&国内でトップのエッジコンピューティングプロバイダーへの進化を加速させていきたい」と述べている。
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