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フローで考える熱のモデリング(その2) 〜熱コンダクタンスの定義と導出方法〜1Dモデリングの勘所(32)(4/5 ページ)

「1Dモデリング」に関する連載。連載第32回では「フローで考える熱のモデリング(その2)」と題し、熱コンダクタンスの定義とその導出方法について取り上げる。

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対流熱伝達に関する熱コンダクタンス

 以上の知見を基に、加熱平板の対流熱伝達に関する熱コンダクタンスを求める。最初に、図8に示す強制対流熱伝達について考える。

強制対流熱伝達
図8 強制対流熱伝達[クリックで拡大]

 強制対流熱伝達は一般に、

式40
式40

で表現できる。すなわち、加熱面が外部からの流れを受ける場合の熱伝達である。水平平板の強制対流層流平均熱伝達は、

式41
式41

で、強制対流乱流平均熱伝達は、

式42
式42

で表現可能であることを、いくつかの仮定の下に導出できる(参考文献[1])。ここで重要なのは、乱流の方が層流に比べてその攪拌作用によって熱伝達が大きいということだ。

 上記式に、具体的に数値を代入してそうであることを確認してみる。流速u=10[m/s]、平板大きさ0.1×0.1mとすると、層流に関して、

model forcedHeatTransferLam
import Modelica.Constants.pi;
 Real Pr;
 Real Re;
 Real G;
 Real h;
 Real mu;
 parameter Real ram=0.03;
 parameter Real c=1000;
 parameter Real nu=15e-6;
 parameter Real A=0.01;
 parameter Real L=0.1;
 parameter Real ro=1;
 parameter Real v=10;
equation
 Pr=mu*c/ram;
 Re=v*L/nu;
 h*L/ram=0.664*Pr^(1/3)*Re^(1/2);
 G=h*A;
 mu=ro*nu;
end forcedHeatTransferLam;
リスト1

となり、乱流に関しては、

model forcedHeatTransferRan
import Modelica.Constants.pi;
 Real Pr;
 Real Re;
 Real G;
 Real h;
 Real mu;
 parameter Real ram=0.03;
 parameter Real c=1000;
 parameter Real nu=15e-6;
 parameter Real A=0.01;
 parameter Real L=0.1;
 parameter Real ro=1;
 parameter Real v=10;
equation
 Pr=mu*c/ram;
 Re=v*L/nu;
 h*L/ram=0.037*Pr^(1/3)*Re^(4/5);
 G=h*A;
 mu=ro*nu;
end forcedHeatTransferRan;
リスト2

となる。上記を実行すると、

  • 層流熱伝達に関する熱コンダクタンス:G=0.408[W/K]
  • 乱流熱伝達に関する熱コンダクタンス:G=0.637[W/K]

となる。この結果は、熱伝達率でいうと層流で40.8、乱流で63.7であるため、前回の図8の“熱伝達率の目安”の媒体が空気の場合の強制対流の値に合致している。

 続いて、自然対流熱伝達について考える。自然対流熱伝達は一般に、

式43
式43

で表現される。加熱平板の場合、β=1/4、γ=1/4、また平板の設置方向によってαは図9に示す値となることが経験的に分かっている(参考文献[2])。

自然対流熱伝達
図9 自然対流熱伝達[クリックで拡大]

 強制対流熱伝達と同じ加熱平板を垂直に設置し、平板表面温度を80℃、雰囲気温度を15℃とすると、

model naturalHeatTransfer
import Modelica.Constants.pi;
import Modelica.Constants.g_n;
 Real Pr;
 Real Gr;
 Real G;
 Real h;
 Real mu;
 Real beta;
 parameter Real ram=0.03;
 parameter Real c=1000;
 parameter Real nu=15e-6;
 parameter Real A=0.01;
 parameter Real L=0.1;
 parameter Real ro=1;
 parameter Real Alfa=0.56;
 parameter Real Ts=80;
 parameter Real Ta=15;
equation
 Pr=mu*c/ram;
 Gr=beta*g_n*(Ts-Ta)*L^3/nu^2;
 beta=1/(Ts+273.15);
 h*L/ram=Alfa*Gr^(1/4)*Pr^(1/4);
 G=h*A;
 mu=ro*nu; 
end naturalHeatTransfer;
リスト3

となり、これを実行してG=0.075[W/K]を得る。この結果は、熱伝達率でいう7.5であるので、前回の図8の“熱伝達率の目安”の媒体が空気の場合の自然対流の値に合致している。

参考文献:

  • [1]庄司正弘|伝熱工学 8.1節、8.2節|東京大学出版会(1995)
  • [2]JSMEテキストシリーズ|伝熱工学 3.7節(2005)

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