トヨタ車体は、乗用車よりも小型なモビリティ向けに燃料電池(FC)のセパレーターを開発中だ。自転車やドローンなどに燃料電池を搭載するため、カーボンと樹脂の複合材で軽量化を図るが、金属製のセパレーターと比べて成形に時間がかかるのが課題だった。当初は15秒かかっていた成形時間を開発中の工法では2秒に短縮。コストも当初の4分の1に抑えた。
また、割れやへこみ、キズなどが発生したセパレーターを再加熱して再利用できるようリサイクル技術の開発も進めている。小型モビリティでの燃料電池の普及を見据え、効率的なセパレーター生産の準備を整えている。
オイルを循環させて金型を加熱/冷却
燃料電池のセパレーターは、セルを分割/遮断し、ガスを円滑にセル内に送り込む機能を担う。乗用車に搭載される既存の燃料電池では金属製のセパレーターが使われている。
樹脂製の燃料電池セパレーターの実用化に向けて、トヨタ車体は金型の温度を適切に制御するプレス工法を開発。また、セパレーターを構成する複合材内の導電フィラーの特性を阻害しない新たなリサイクルプロセスも確立した。
開発を開始した当初は、金型を電気ヒーターで加熱し、水冷で冷却する方式としていた。均一な加熱や冷却が可能だが、金型の厚みや複雑な構造が課題となっていた。「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」(2024年5月22〜24日、パシフィコ横浜)では、加熱も冷却も金型内でオイル媒体を循環させる方式を展示した。高温のオイル媒体により急速な加熱が可能になった他、部分的な加熱や冷却により成形に必要な熱エネルギーも低減しているという。
割れやへこみ、キズなどが発生した材料をリサイクルするには、回収後の表層の不純物除去や、複合材の再溶融混練が必要になる。再溶融混練では、カーボンの粉砕抑制が課題になった。溶融混練時のせん断力を制御し、スクリュー形状や溶融温度、回転数などの条件をコントロールすることで、カーボン粒子粉砕制御とリサイクルが可能になったとしている。
関連記事
- 手に乗るサイズの燃料電池を開発中、小型モビリティの電源も視野
トヨタ紡織は「人とくるまのテクノロジー展 2023 横浜」において、燃料電池を使ったモバイルバッテリーを展示した。 - リチウムイオンキャパシターを搭載した燃料電池ドローンが試験飛行に成功
ジェイテクトは2022年6月20日、同社製のリチウムイオンキャパシターを搭載した燃料電池ドローンが試験飛行に成功したと発表した。燃料電池ドローンはロボデックスが開発したもので、「Japan Drone2022」(2022年6月21〜23日、幕張メッセ)に出展する。 - 水素を手軽なエネルギーに、トヨタがポータブルカートリッジと周辺機器を開発中
トヨタ自動車は「第13回国際スマートグリッドEXPO」において、ポータブル水素カートリッジの周辺機器を披露した。 - 建機の脱炭素は電池駆動だけじゃない、燃料電池や有線電動に加え代替燃料も
「第6回 建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO 2024)」において、カーボンニュートラルに対応する建設機械が多数展示された。大容量のリチウムイオン電池を搭載するフル電動建機だけでなく、燃料電池や有線電動、代替燃料などの提案も行われていた。 - 日産の燃料電池が定置用でトライアル開始、使用するバイオ燃料も確保
日産自動車はバイオエタノールから取り出した水素で発電する定置型の燃料電池システムを開発し、栃木工場でトライアル運用を開始した。使用するバイオエタノールは、スタートアップ企業のバイネックスと協業して確保する。 - 川崎重工とシンビオが燃料電池を開発、建設機械などモビリティ向け
川崎重工とシンビオはモビリティ向け燃料電池システムの共同開発に関する覚書を締結した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.