スマートヒューズでヒューズボックスを小型化、“飛んだ”時の部品交換も不要に:人とくるまのテクノロジー展2024
日本テキサス・インスツルメンツは、「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」において、車載システムへの電力供給の安全を確保するために用いられているヒューズボックスについて、ヒューズのIC化によって小型化に加えヒューズ交換が不要になる「スマートヒューズ」を提案した。
日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は、「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」(2024年5月22〜24日、パシフィコ横浜)において、車載システムへの電力供給の安全を確保するために用いられているヒューズボックスについて、ヒューズのIC化によって大幅な小型化が可能になる「スマートヒューズ」を提案した。
ヒューズボックスは、自動車用バッテリーから供給される電力で動作するさまざまな車載システムにおいて、何らかの要因で大電流が流れた場合に電子部品であるヒューズによって電流を遮断するためのものだ。内燃機関車のみならEV(電気自動車)でも、自動車用鉛バッテリーからの電力で車載システムを動作させるとともに、ヒューズボックスで万が一の安全を確保するのが現在も一般的だ。
ヒューズボックスは、コの字型の金属部品であるブレード型ヒューズを中心に多数組み込まれているため、そのサイズはかなり大きくなる。車両内の容積が限定される自動車において全ての車載システムは小型化や軽量化が迫られており、ヒューズボックスもその例外ではない。このヒューズボックスの小型化に貢献するのが、日本TIが今回展示したスマートヒューズだ。
ヒューズは定格以上の大電流が流れたときに部品内で溶断が起こることで電流を遮断する。これに対してスマートヒューズは、ハイサイドスイッチとして配置したFETを駆動して電流を遮断することになる。ただし、スマートヒューズでは、電子部品であるヒューズの溶断時と同様の動作を行えるかが課題になる。「通常のスイッチICでは難しいが、当社のスマートヒューズ用のICであれば、電流遮断時の時間に対する電流値の変化などを電子部品のヒューズと同じように模擬できる」(日本TIの説明員)という。
展示では、車載システムの中でも比較的大電流が必要なワイパーの制御システムを対象に、2個分のヒューズを代替できる「TPSxHCSx-Q1」を用いたスマートヒューズによって的確に電流を遮断できることを示した。「5mm角程度のICがヒューズ2個分の機能を持つので、周辺回路を含めてかなりの小型化が可能だろう。何より、電流遮断が起きるいわゆる“ヒューズが飛んだ”後の部品交換が不要というメリットもかなり大きい」(同説明員)としている。
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