日本TIが電力変換デバイスの新製品、GaNパワーステージと絶縁型DC-DCモジュール:組み込み開発ニュース
日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は、電力変換デバイスの新製品である100VGaN(窒化ガリウム)パワーステージと1.5W絶縁型DC-DCモジュールについて説明した。
日本テキサス・インスツルメンツ(以下、日本TI)は2024年3月8日、オンラインで会見を開き、電力変換デバイスの新製品である100VGaN(窒化ガリウム)パワーステージと1.5W絶縁型DC-DCモジュールについて説明した。両製品とも量産開始前の数量で受注を開始しており、1000個受注時の参考単価は100VGaNパワーステージが3.75米ドル、1.5W絶縁型DC-DCモジュールが1.30米ドルとなっている。
GaNパワーステージは太陽光パワーオプティマイザーなどに最適
TIは、パワー半導体であるMOSFETのハイサイドとローサイドの2チップとゲートドライバICを1つのパッケージに集積したパワーステージ(電力変換段)製品を展開している。新製品の100VGaNパワーステージは、太陽光発電システムを構成する各パネルの電力を調整するパワーオプティマイザーなどに用いられる数百Vクラスの中電圧の降圧/昇圧/昇降圧コンバーターを開発する上で電力変換回路の電力密度を向上するのに有効なソリューションになるという。
パッケージ内部に搭載するGaN FETはシリコンMOSFETよりも高いスイッチング周波数を利用できるため、使用する磁気素子を大幅に小型化できる。電力密度は1.5kW/平方インチ(91.5W/cm2)を実現しており、シリコンMOSFETを用いたディスクリート部品で構成するパワーステージ回路と比較してサイズを40%以上削減できる。出力静電容量も60%小さくなり、ゲートドライブ損失も50%低減できているため、パワーステージ回路のシステム効率は98%以上に向上できるとしている。
また、デバイスの上面と底面の両面から冷却可能なTI独自の両面冷却パッケージを採用しているため、競合企業のGaNデバイス製品よりも熱抵抗を削減できる。特に冷却ファンなどのアクティブ冷却部品を使用しないシステムを開発する上で有効な機能になるという。
「LMG2100R044」と「LMG3100R017」の2品種があり、LMG2100R044は5.5×4.5mmの16ピンQFN(クワッドフラットパックリードなし)パッケージ、LMG3100R017は6.5mm x 4.0mm の16ピンQFNパッケージとなっている。
次世代トランス内蔵技術で絶縁型バイアス電源の回路を1つのモジュールに
一方、1.5W絶縁型DC-DCモジュールは、大型の絶縁トランスなどを用いて構成する絶縁型バイアス電源の回路を、TI独自の次世代トランス内蔵技術によって1つのモジュールに集積した製品である。4×5mmのVSONパッケージとなっており、外付けの絶縁トランスなどディスクリート部品で構成した回路と比べてサイズを8分の1に削減するとともに、部品点数も半減できる。また、競合他社の絶縁型DC-DCモジュールと比べて電力密度は3倍に達するという。
また、ノイズに対する堅牢性の高さも特徴の一つだ。200V/nsを上回る業界最高クラスの同相過渡耐性(CMTI)と、3pF未満という1次側から2次側への小さい静電容量を通じて、非常に大きい過渡電圧にも対応できる。
主な用途として挙げるのが、車載向けではバッテリーマネジメントシステム(BMS)と車載充電器(OBC)、産業機器向けではデータセンター用電源とEV(電気自動車)用充電システムなどを挙げている。特に車載向けでは、振動対策が必要な外付けの絶縁トランスが不要になることが大きなメリットになるとしている。
車載向けの「UCC33420-Q1」と産業機器向けの「UCC33420」の2品種を用意しており、UCC33420-Q1については、入力電圧、出力電圧、電力定格が低い他のバージョンが2024年第2四半期に入手可能になるという。また、車載バッテリーの800V化のトレンドに対応し、800V以上の高電圧アプリケーションに適した追加パッケージオプションの準備も進めている。
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