TIがEV向けに高電圧半導体製品を展開、次世代パワー半導体はGaNデバイスに注力:組み込み開発ニュース
日本TIは、EVをはじめ車載向けに展開している高電圧半導体製品の事業展開について説明した。
日本テキサス・インスツルメンツ(以下、日本TI)は2023年11月1日、東京都内で会見を開き、EV(電気自動車)をはじめ車載向けに展開している高電圧半導体製品の事業展開について説明した。
TIは耐圧100〜3kVの範囲で高電圧半導体製品を展開している。高電圧半導体というとインバーターやDC-DCコンバーターのスイッチングに用いられるMOSFETやIGBTなどのパワー半導体のイメージが強いが、同社が得意とするのはその周辺回路で用いられるゲートドライバICや電圧/電流センサー、ソリッドステートリレーなどが中心となる。米国TI本社で高電圧製品事業部 バイスプレジデント 兼 ゼネラルマネージャを務めるカナン・サウンダラパンディアン(Kannan Soundarapandian)氏は「当社が長年開発に注力してきた高電圧技術によって、EVの走行距離を大きく伸ばすとともに、充電時間を内燃機関車の燃料補給と同等レベルまで高速化することが可能になる。また、当社の高電圧半導体製品であれば、システム電圧を400Vから800V、800Vから1500Vなどのようにさらに高められるので、その分だけ銅部品やハーネスなどを簡素化してEVのコスト削減を実現できる。このような高電圧技術と併せて、安全性を担保する絶縁についても高いレベルで確保できている」と語る。
EV市場の拡大によって電動システムをはじめ自動車への高電圧半導体製品の採用が広がっているが、信頼性の高い高電圧システムを構築するために「まずは正確なセンシングが必要になる」(サウンダラパンディアン氏)という。そこで役立つのが、絶縁型の電流センサーや電圧センサーだ。正確なセンシングの結果を基に、モーターやインバーター、DC-DCコンバーターなどを絶縁型ゲートドライバICで緻密に制御/駆動することで、車載バッテリーへの充電や電力システム間の通信に関わる回路を簡素することも可能になる。
さらにEVの市場拡大は、EVが住宅の電力エコシステムにおける蓄電池の役割を果たすことでV2G(Vehicle to Grid)やV2H(Vehicle to Home)の市場拡大にもつながり、そこでもTIの高電圧半導体製品の採用が広がるという。サウンダラパンディアン氏「これからの時代は、住宅の中に電力消費だけでなく発電と蓄電という3つの要素が存在することが当たり前になる。そのようなEVと連携する電力システムでも、当社の高電圧半導体製品が役立つ」と強調する。
なお、注目すべき高電圧半導体製品としては、これまでディスクリート部品で構成するのが一般的だった変圧器バイアス回路を8mm角のパッケージに集積した統合変圧器バイアスや、最大1500V耐圧で8mm角のパッケージにヒューズも集積している絶縁型ゲートドライバICなどを挙げた。
また、スイッチングに用いるパワー半導体のラインアップでは2015年から展開しているGaN(窒化ガリウム)のFETがある。このGaN FETを活用することにより、車載バッテリーへの充電時間を内燃機関車の燃料補給と同等レベルにしていく方針だ。「次世代パワー半導体としてはSiC(シリコンカーバイド)もあるが、TIはGaNへの投資に注力する。足元ではノーマリーオフ動作の製品の開発を進めているところだ」(サウンダラパンディアン氏)としている。
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