EVの内気循環エアコンで感じやすい眠気、CO2吸着フィルターが吹き飛ばす:人とくるまのテクノロジー展2024
村田製作所は、「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」において、開発中のCO2吸着フィルターを展示した。室温と大気圧の環境下でCO2吸着が可能であり除湿効果も得られることから、EVのエアコン利用時に一般的な内気循環モードのCO2濃度増加によって起こりがちな眠気の発生を抑える効果が期待できる。
村田製作所は、「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」(2024年5月22〜24日、パシフィコ横浜)において、開発中のCO2吸着フィルターを展示した。室温と大気圧の環境下でCO2吸着が可能であり除湿効果も得られることから、EV(電気自動車)のエアコン利用時に一般的な内気循環モードのCO2濃度増加によって起こりがちな眠気の発生を抑える効果が期待できる。この他、ビニールハウス内のCO2濃度制御などにも活用できるという。
今回展示したCO2吸着フィルターは、ハニカム構造を持つ直径20×高さ20mmのセラミック部品の表面にナノ多孔材料であるMOF(金属有機構造体)を塗布している。1gの重さでサッカー場レベルの表面積を持つMOFのナノスケールの穴にCO2を吸着する物質を入れ込むことで、CO2との接触を増やして吸着の速度を高めるという仕組みになっている。CO2の吸着量は10分間で10mgだ。併せて湿度を低減できる機能も有している。
フィルターに吸着したCO2は60℃に加熱することで脱離させられる。展示では、2個のCO2吸着フィルターを使って、一方で自動車のミニチュアモデル内に吹き込んだCO2を吸着しつつ、もう一方はフィルター内に吸着済みのCO2を加熱することで外部に放出するデモを披露した。「1個のフィルターを回転させて、吸着と放出の両方の役割を持たせることも可能だろう」(村田製作所の説明員)という。
EVの市場普及に向けた課題の一つが走行距離だ。特に、暑い夏と寒い冬に使用するエアコンの消費電力は走行距離を想定以上に短くする原因になる。そこで、エアコンによる消費電力をできるだけ減らすため内気循環モードが利用されることが多いが、この場合車室内のCO2濃度の上昇が眠気を誘発する要因になる。4人乗車して内気循環モードでエアコンを用いた場合、15分程度で眠気を感じるという調査結果もある。
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