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製造業がソフトウェア開発のCO2算定ルールで注意すべきポイントソフトウェアのグリーン化が製造業に与える影響(3)(2/2 ページ)

本連載ではソフトウェア開発/運用でのCO2排出量見える化と、製造業における取り組みのポイントや算定における留意点を3回にわたり解説する。最終回では、2024年3月末に発表された「ソフトウェアに関するカーボンフットプリントの製品別算定ルール」のポイントを紹介したい。

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(E)(F)対象とした温室効果ガス(GHG)の一覧、選択した特性化係数

 CO2以外のGHGは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)の報告書に記載されている100年間の地球温暖化係数(GWP)を用いて、全てCO2相当量に換算しなければならない。なお、ルール本編にIPCC6次評価報告書のGWP100の係数が参考情報として記載されている。

(G)カットオフ対象としたもの

 カットオフは実施しないことが望ましいとした上で、総排出量の1%未満と推定される排出源はその対象としてもよいとしている。また、カットオフ対象の合計量が総排出量の5%未満に収まることを求めている。

 ルールのAPPENDX(A-3)にカットオフの例が記載されているので、参考にされたい。

(H)(I)配分の方法、使用したデータに関する情報

 個別のプロセスごとの測定値の収集が困難な場合、合計の排出量から配分可能である。その際は各プロセスの作業の使用時間の割合で配分する。

 例えば、開発に使用した機器など(サーバ)の生産段階の排出量を製造やテストなど複数のプロセスへ配分する場合は、それぞれの開発プロセスに投じた工数などの作業時間に応じて案分することになる。またそこで使用されるデータについては詳細に記載する必要がある。

(J)電力の取り扱い

 外部から購入した電力などについては再エネ証書を利用してもよいとされている。再エネ証書を使用する場合は、どのような証書をどの程度用いたかを明記する必要がある。なお、本ルールでのCFP算定においてはカーボンオフセットを適用してはならない。

(K)解釈の結果

 CFPの算定結果の解釈に、四捨五入のルールや適用の範囲を含む不確実性の評価を含み、配分の方法を特定し文書化する必要がある。また特に異なる企業間で製品を比較する場合は、算定に用いている機能単位が同一でない場合が多く、CFPの結果が環境性能の差を表しているとは限らないことを明示しておく必要がある。

(L)値に基づく判断をした場合の開示と正当性の説明

 値に基づく何らかの判断をする場合は、算定内容について内部検証/第三者検証のいずれかを実施することが望ましいとされる。値を開示する場合はより客観的な保証が望ましいため、第三者による検証が推奨されている。

 検証実施上の留意事項もルール6-3に詳細記述があるので参考にされたい。

(M)(N)算定単位、算定対象の正当性、ライフサイクルステージの説明

 算定に用いる単位や対象については、ルールに詳細な記述があり参照されたい。ライフライクルステージは、クレードルトゥゲート(製品の開発から出荷まで)である。

(Q)本ルールで示すシナリオと異なるものを採用した場合に、その内容と最終的な結果に与える影響の評価

 輸送シナリオ、在宅勤務のシナリオについてはルール(APPENDIX BおよびC)に記載されている。それ以外のシナリオを活用する際は算定報告書に内容を記載する必要がある。

(P)(Q)CFPの算定対象とした期間、参照した製品別算定ルール、またはその他の要件

 CFPの算定時に参照したルールは記載しなければならない。特に、算定の値を比較する場合には注意が必要で、それらが同一のルールに基づいて算定されていることが必須である。さらに同一ルールであっても詳細の算定方法や前提条件が違えば算定結果が異なるが、それらについても製品間でそろえる必要がある。

おわりに

 本ルールは、初版(Version 1.0)であり、今後も検討メンバーを通じて継続検討され、見直されていく。また本ルールはWebシステムにおける受託開発に限定されており、今後対象の拡大も望まれると想定される。是非、皆さまから多くの声を上げて頂き、検討拡大されていく未来に期待もしている。そしてこうしたルール整備の継続によって今後ソフトウェア開発においてもより環境負荷の少ない手法/手段が正しく評価されていくことを切に望んでいる。

 最後に本ルールの策定については、小職も微力ながらその検討に参画させて頂いた。参画されたIT企業の皆さまは、年末年始の忙しい時間を厭わず検討を重ねてこられており、本当に頭が下がる思いである。末筆ではあるが皆さまの努力に改めて感謝を申し上げたい。

 ソフトウェア開発におけるCO2算定についての連載はこれにて終了となる。記載内容については専門用語が多く分かりづらい内容も多くなってしまったのではと改めて反省する部分もあるが、読者の皆さまにおかれては最後までお付き合い頂いたことに感謝を申し上げたい。

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執筆者プロフィール

小林 直幸(こばやし なおゆき)
株式会社クニエ イノベーションマネジメント担当 ディレクター

大手事業会社の事業企画部門において顧客企業向けの分析支援サービスを立上げ、外資系コンサルティングファームへの転身後はAIやブロックチェーンなどデジタルを活用した事業戦略チームで経験を積む。
クニエでは顧客データ分析/データ活用支援、ニューラルネットワークなどのAIを活用したナレッジマネジメントの変革支援や、システム開発へのGHG可視化/削減など、主にテクノロジーを活用した顧客企業変革をリードしている。


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