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超長期の「脱炭素計画」を確実に遂行する、製造業に必要な4つのステップ「サステナブルプランニング」の方法論(3)(1/3 ページ)

本連載では、企業にとっての新たな命題となった環境経営、すなわちGHG削減に不可欠なGHG排出量計画「サステナブルプランニング」の要点について述べる。第3回はサステナブルプランニング実装に向けた、段階的な導入方法論を解説する。

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 連載第2回では、GHG(温室効果ガス)排出量削減活動を推進する企業の課題として、大きく分けて3つを取り上げた。

(1)GHG排出量削減活動全体の業務プロセスと役割分担の明確化
(2)排出量削減業務につながるScope3関連データ収集の仕組み構築
(3)カーボンニュートラル実現という超長期目標達成に必須の年次予算管理の枠組み整備

 企業が今後数十年にわたりGHG排出量削減活動を進めるには、合理的かつ弛み(たゆみ)なく継続できる仕組みを構築する必要がある。上記のような課題は解決しておかなければならないのだ。

 最終回では、この課題対応のためのサステナブルプランニング実装に向けた、段階的な導入方法論を解説する。

サステナブルプランニングの導入ステップ

 第1回で言及した通り、サステナブルプランニングにおいては、販売や生産計画に対して製品当たりのGHG排出原単位を乗じて、将来の排出量見通し(計画)を一定期間のサイクルで可視化する。それを期初のもくろみ(予算)と比較して、排出量が想定より高くなる領域(ホットスポット)を特定し、集中的に対策することで、効果的なGHG排出量目標達成を目指す。

 この新計画業務を成功させるには、計画の立案、管理から、削減活動に至る一連の業務プロセスと、それを支えるデータを組織内外から収集、統合する必要がある。さらに、それらのデータは削減活動に関わる各部署/担当者が必要とする粒度で提供されねばならない。以下では、この仕組みを着実に構築する導入方法論を4段階で紹介する。

ステップ1:GHG排出量削減プロセスの明確化

 サステナブルプランニングの枠組みは、当年度の排出量目標に当たる「GHG年度予算」、当年度の期中実績と年度末までの計画からなる「GHG年度見通し」の2階建てで構成されている。この予算と計画のギャップを起点に、企業内の各部署がギャップを最小化すべく具体的な対策を講じていく。

 一般的には経営企画部門やCSR部門、環境経営部門などが旗振り役となり、設計や調達、生産、販売など、各事業の機能部門が具体的なアクションをとることになる。連載第2回で言及したが、この計画と各部署による削減活動のシームレスな連携を意識して、PDCAが自律的に回る業務プロセスを設計することが大切だ。当然、業務フローや役割分担チャートを用いた各部署の役割の明確化も求められる。


図1:サステナブルプランニングに基づく削減プロセスと各部署の役割[クリックして拡大]

 また、GHG排出量削減施策の推進は、利益や売り上げなど一般的な損益評価とトレードオフになる場合がある。そのような状況で、施策採否を適切に判断するためには、企業損益とGHG排出のバランスを評価する新たな管理指標(KPI)が必要になる。「炭素利益率(Return On Carbon:ROC)」は、営業利益をGHG排出量で除算して算出されるKPIだ。これを使えば、企業や組織がGHG排出を抑制しつつ、どれだけの収益を上げているかを評価できる。ROCを重視する企業では、たとえ収益を悪化させかねないGHG削減施策でも、それに見合う削減効果があると判断すれば削減施策を採用できるようになるだろう。

 ROCは将来的に導入が予想される炭素税への財務耐性を評価する上でも適している。経営管理部門は、GHG排出量予算と計画のギャップ以外にも、ROCのようなKPIも活用しつつ、各部署の削減活動をマネジメントすることが求められる。

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