米ぬか由来ナノ粒子の抗がん作用を確認:医療技術ニュース
東京理科大学は、米ぬか由来ナノ粒子が優れた抗がん作用を示すことを明らかにした。未利用バイオマスを原料とする、安価で安全な新しいがん治療薬の開発につながることが期待される。
東京理科大学は2024年4月22日、エクソソーム様の米ぬか由来ナノ粒子(rbNPs:rice bran-derived nanoparticles)が優れた抗がん作用を示すことを明らかにしたと発表した。
米ぬかは、γ-オリザノール、γ-トコトリエノールなど抗がん作用を示すさまざまな物質が含まれている。しかし、大部分が利用されず、廃棄される未利用バイオマスの1つだ。
研究グループは、rbNPsの抗がん作用を確認するため、コシヒカリの米ぬか懸濁液からrbNPsを得た。得られたrbNPsはエクソソーム様の中空幕構造で、平均粒子径は約130nm、負に帯電していた。また、100gの米ぬかから平均約4×1013個と効率よく調製できることも分かった。
がん細胞株を用いて細胞増殖抑制作用を調べたところ、rbNPsは粒子濃度依存的に細胞抑制作用を示した。一方、非がん細胞株に対しては細胞抑制作用を示さず、rbNPsのがん細胞に対する選択的な細胞増殖抑制作用が示唆された。
また、マウス結腸がんcolon26細胞を用いた実験で、rbNPsと細胞増殖抑制作用が報告されているブドウ、ショウガ、レモン由来のナノ粒子、抗がん剤であるドキシルを比較した。rbNPsは、全ての濃度でcolon26細胞を最も多く減少させた。
超高速液体クロマトグラフ質量分析、ガスクロマトグラフ質量分析でrbNPsを調べると、抗がん作用を持つ化合物のフェルラ酸、γ-オリザノール、α-トコフェロール、γ-トコフェロール、γ-トコトリエノールが高濃度に含まれていた。
rbNPsの添加による影響を解析すると、細胞増殖を制御するβ-カテニンと、細胞周期を調節するサイクリンD1のメッセンジャーRNA発現量が減少し、細胞周期が停止することで細胞増殖が食い止められていることが示唆された。加えて、DNA断片化とクロマチン凝縮の誘導により、rbNPsがcolon26細胞のアポトーシスを誘導することが分かった。
colon26細胞を移植した腹膜播種(はしゅ)モデルマウスにrbNPsを腹腔内投与すると、体重減少など副作用を示すことなく、colon26細胞の腹膜播種が顕著に抑制された。これにより、rbNPsが培養細胞だけでなく、動物レベルでも抗がん作用を示すことが確認できた。
今回の研究成果は、rbNPsを用いた安価で安全な新しいがん治療薬の開発につながることが期待される。
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