日産自動車は2024年5月17日、2030年までにアルミニウム部品の全量を低CO2排出のアルミニウムに置き換えると発表した。2024年度から、新型車だけでなく現行モデルを含めた全ての車両で、グリーンアルミニウムまたはリサイクルアルミニウムを使用する「低CO2アルミニウム」製の部品の採用を進めていく。
グリーンアルミニウムは非化石燃料由来の電力で製錬することで、火力発電由来の電力を使用して製錬した場合と比べてアルミニウム地金製造時のCO2排出量を50%削減する。リサイクルアルミニウムは、火力発電由来の電力を使用して製錬した場合と比べてCO2排出量を95%削減できる。
新型車では、2027年以降に生産を開始する全モデルで、アルミニウムを原材料とする部品に低CO2アルミニウムの適用を進める。現行モデルは2024年度から日米欧において、ホイールやサスペンション部品、アクスル部品、ハーネスなどで低CO2アルミニウム製のものを順次調達する。2024年度末に、日米欧で調達するアルミニウム部品で使用するアルミニウムの20%が低CO2アルミニウムに置き換わる計画だ。
日産自動車はこれまで、神戸製鋼所とUACJから低CO2アルミニウムの板材を調達し、日本生産モデルのパネルに使用してきた。軽量化のため、フードやドアなどのパネル部品にアルミニウム板が使われている。
リサイクルアルミニウムに関しては、生産時に発生した廃棄材やスクラップ、自社の使用済み製品などを再生したクローズドループリサイクルに取り組むことを発表。生産時に発生した廃棄材は種類別に区別して回収する分離回収プロセスにより高品質な再生を実現する。グリーンアルミニウムに関しては、神戸製鋼所が太陽光発電の電力のみを使用して電解製錬したアルミニウム原料を精錬メーカーから調達している。
日本だけでなくグローバルで、全てのアルミニウム部品に低CO2アルミニウムを使用することで、CO2排出削減を推進する。車両の10%を占めるとされるアルミニウムを全て低CO2アルミニウムに置き換えることで、2050年にクルマのライフサイクル全体でのカーボンニュートラルの実現につなげる。
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