ゴムノキの組織培養技術に関する共同研究を開始、天然ゴムの収量増を目指す:研究開発の最前線
住友ゴム工業は、タイのコンケン大学と、ゴムノキの組織培養技術に関する共同研究の協定を締結した。植物生理学的反応のデータを解析し、天然ゴムの収量増加に関係する仕組みを解明する。
住友ゴム工業は2024年5月8日、タイのコンケン大学と、ゴムノキの組織培養技術に関する共同研究の協定を締結したと発表した。植物生理学的反応のデータを解析し、天然ゴムの収量増加に関係する仕組みを解明し、天然ゴムのサステナブルな調達を目指す。
一般的にゴムノキの苗木増殖では接ぎ木が用いられるが、成長性や耐病性などは台木の影響を大きく受ける。住友ゴム工業では、ゴムノキの一部組織を分離し、試験管で培養する組織培養技術を開発している。この技術を活用すれば、根と茎が同一になり、成長性の面で有利になると考えられている。実際に同技術由来の苗は、接ぎ木由来と比較して植え付け初期(1〜2年)の成長が早いことが分かっている。
一方、収量増加のメカニズムは十分に解明されていない。そのため、今回の共同研究では、同技術由来の苗と接ぎ木由来の苗の成長状況や葉の形状の調査に加え、蒸散量の計測などを実施。植物生理学的反応に関係するデータを収集して、相違点を評価する。
将来的には、この共同研究のスキームで、住友ゴム工業がコンケン大学からのインターンシップを受け入れることも検討している。ゴムノキの生産性向上だけでなく、天然ゴムの生産国であるタイの人材育成にも取り組んでいく考えだ。
住友ゴム工業は、2023年3月にタイヤ事業に関する独自のサーキュラーエコノミー構想「TOWANOWA(トワノワ)」を発表した。今後、TOWANOWAの「材料開発・調達」分野で、コンケン大学との共同研究のデータを有効活用し、生産性の高い天然ゴムの調達を図り、天然ゴムの持続可能性を高めていくとしている。
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