PPベースの自動車用加飾フィルムの量産技術を確立、累計100億円の売上高を目指す:材料技術
DNPは、リサイクルしやすいポリプロピレン(PP)をベースとした自動車用加飾フィルムの量産技術を確立した。今回の製品を国内外の自動車業界を中心に提供し、2030年度までに累計100億円の売上高を目指す。
大日本印刷(DNP)は2024年5月14日、リサイクルしやすいポリプロピレン(PP)をベースとした自動車用加飾フィルムの量産技術を確立したと発表した。DNPが長年で培ったPPフィルムへの印刷/加工技術を生かして高い意匠性/成形性を実現したこの新製品は温室効果ガス(GHG)排出量の削減も期待できる。
新製品の特徴
同製品は、DNPのコンバーティング(材料加工)技術を応用/発展させることで、PPをベースとした自動車用加飾フィルムの優れた意匠性と物性/成形性の両立を実現し、量産技術を確立した。同製品で利用されているPPは、現在汎用的に使われているアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)よりも原料製造時のGHG排出量が少ないため、自動車部品全体におけるGHG排出量の削減につながる。
今後の展開
DNPは、事業活動と地球環境の共生を考え、環境問題への対応を重要な経営課題の1つに位置付けている。2020年3月には「DNPグループ環境ビジョン2050」を策定し、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現に向けた取り組みを加速させている。特に「脱炭素社会」の実現に向けては、2050年度までに自社拠点での事業活動に伴うCO2などのGHG排出量を実質ゼロにする目標を掲げるとともに、製品/サービスを通じたGHG排出量の削減を進めている。
その一環で、今回の製品を国内外の自動車業界を中心に提供し、2030年度までに累計100億円の売上高を目指す。また、環境配慮型の製品として、塗装工程を必要としない外装用フィルムも開発し、同様に展開していく。
環境配慮製品の開発背景と概要
国内では年間で約350万台の自動車が廃車されている。2002年に自動車リサイクル法が制定され、廃車の95%以上がリサイクルされるようになった中で、解体/破砕後に残るプラスチックくずなどの自動車シュレッダーダスト(ASR)は、サーマルリサイクル(焼却処理)されている。
欧州では「自動車設計/廃車(ELV)管理における持続可能性要件に関する規則案」改定の検討が進み、近い将来、自動車への再生プラスチックの使用が義務化される見込みであり、国内外の自動車メーカーや自動車関連部材を扱う企業はその対応に動いている。
こうした状況に対し、自動車部品として使用量が多くリサイクルに適したPPは、今後更に増加が見込まれる一方、加飾フィルムのベースとして使用すると、インキの密着性が弱く、高い意匠表現と物性/成形性の両立が難しいという課題があった。そこで、DNPは、培ってきた印刷技術とノウハウを生かして、高い意匠性と物性/成形性を両立させるという課題を解決し、PPをベースとした自動車用加飾フィルムの量産技術を確立した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- DNPが透明導電フィルム市場に再参入、直径11nmの銀ナノワイヤを採用
DNPは粒径11nmの銀ナノワイヤ分散液を用いた透明導電フィルムを武器に、一度撤退した透明導電フィルム市場に再参入する。 - DNPが展開する全分野の技術を集積した共創施設をオープン、「ミニ腸」も展示
大日本印刷は、東京都内のDNP市谷加賀町第3ビルに開設した共創施設「P&Iラボ・東京」を2023年5月8日にオープンした。 - DNPが2nm世代のEUVリソグラフィ向けフォトマスク製造プロセス開発を本格的に開始
DNPは、半導体製造の最先端プロセスのEUV(Extreme Ultra-Violet、極端紫外線)リソグラフィに対応した、2ナノメートル(nm:10-9m)世代のロジック半導体向けフォトマスク製造プロセスの開発を本格的に開始したと発表した。 - DNPが3nm相当のEUVリソグラフィ向けフォトマスクを開発
大日本印刷は、3nmに相当する、極端紫外線リソグラフィ向けのフォトマスク製造プロセスを開発した。2024年下期には、マルチ電子ビームマスク描画装置を増設し、稼働を開始する見込みだ。 - DNPがプラスチック部分を100%リサイクル材にしたICカードを発売
大日本印刷(DNP)は、循環型社会の実現に向けて、非接触対応ICクレジットカードのプラスチック部分全体をリサイクルPVC(ポリ塩化ビニール)で製造することを実現し、同製品の販売を2024年4月に開始すると発表した。 - 両面採光型太陽電池モジュールの発電量を向上させるシートを提供開始
大日本印刷は、両面採光型太陽電池モジュールの発電量を向上させる「DNP太陽光発電所用反射シート」の提供を開始すると発表した。