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1990年代から給与総額はどう変化した? 一般労働者とパートタイマーで比べてみる小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(22)(3/3 ページ)

ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は「現金給与総額」に注目します。

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パートタイム労働者の現金給与総額は?

 日本では女性や高齢者を中心にパートタイム労働者が増えています。また意外なことに、現役世代の男性でもパートタイム労働者の割合が増加しているという統計結果もあるようです。

 パートタイム労働者数の統計については、別の機会に詳しくご紹介しましょう。ここでは、パートタイム労働者の平均月給がどれくらいかを見ていきます。

図4:年平均の現金給与総額(調査産業計/パートタイム労働者)
図3:年平均の現金給与総額(調査産業計/パートタイム労働者)[クリックして拡大] 出所:毎月勤労統計調査より筆者にて作成

 図3を見ると、パートタイム労働者の給与の特徴がよく分かります。どの事業所規模でも、一般労働者と比べて非常に低水準にあることが特徴的ですね。横ばいではありますが、一般労働者と比較するとやや上昇傾向にもあり、事業所規模が大きくなるほど上昇の度合いも大きくなっているようです。

 特に女性の場合は、配偶者の扶養の範囲に収まるよう収入を調整する「年収の壁」を意識した働き方が多いようです。集計結果にも、それが強く反映されているように見受けられます。

パートタイム労働者が増加している日本

 日本では一般労働者とパートタイム労働者で大きく平均月給が異なる傾向にあるようです。一般労働者は給与水準が25年間横ばい傾向です。

 パートタイム労働者は一般労働者と比べてかなり低い水準ですが、徐々に上昇している傾向が見受けられます。それらを平均したものが、図1の就業形態計のグラフとなるわけですが、パートタイム労働者が一般労働者数に対して相対的に増加していることが影響していそうです。

 最後に、日本の労働者の就業形態別の推移も確認してみましょう。

図4:5人以上の事業所規模(労働者数/調査産業計)
図4:5人以上の事業所規模(労働者数/調査産業計)[クリックして拡大] 出所:毎月勤労統計調査より筆者にて作成

 図4が一般労働者(青)とパートタイム労働者(赤)の人数を表したグラフです。一般労働者は3500万人前後でほぼ横ばいが続いていますが、パートタイム労働者は増加し続けていて、合計の労働者数も増加傾向が続いていることが分かりますね。

 合計では1993年に4000万人程度だったのが、2023年には5228万人と1000万人以上増加しています。全体に占めるパートタイム労働者の割合(パートタイム雇用率、緑の線)は上昇傾向が続いていて、1993年に14.4%だったのが、2023年には32.2%に達しています。

 日本では5人以上の事業所規模での労働者は増えていて、その多くがパートタイム労働者であるという特徴があるようですね。

 この現象を読み解くには、現役世代の男性人口減少や、女性の就業率向上、高齢労働者の増加といった背景を踏まえる必要がありそうです。もちろん、統計に含まれていない農林水産業の労働者や、4人以下の零細事業所の労働者、個人事業主が減少している影響もあると思います。

 日本の給与総額は横ばい傾向が続いてきたわけですが、その裏側ではこのような労働者の構成の変化が進んでいたのです。

記事のご感想はこちらから
⇒本連載の目次はこちら
⇒前回連載の「『ファクト』から考える中小製造業の生きる道」はこちら

筆者紹介

小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役

 慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。

 医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業などを展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。


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