「NVIDIA Omniverse」で製造業の3Dワークフローはどう変わるのか?:セミナーレポート(2/2 ページ)
デル・テクノロジーズ主催セミナー「製造業デジタルツイン最前線 - NVIDIA Omniverse導入で進む産業メタバース」の講演レポートをお届けする。
仮想環境で画像検査システムの現場調整作業を効率化
オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部 コントローラ事業部 ソフトウェア開発部 技術専門職の岩村慎太郎氏は「OmniverseとMagic Leap 2を用いた仮想環境における自動検査システムのフロントローディングの取り組み」と題し、産業用ロボットを用いた画像検査システムの実現における、カメラ設定、照明設定、ロボットのティーチング、画像処理設定といった一連の現場調整作業の効率化の取り組み事例を紹介した。
同社では、近年の変種変量生産に対するニーズの高まりを受け、Omniverseが登場する以前から、設備開発のフロントローディングを実現すべく、同社の統合開発環境「Sysmac Studio」の統合3Dシミュレーションを用い、仮想環境での設計およびデバッグによる製作期間の短縮と品質向上に取り組んできた。
産業用ロボットを用いた画像検査システムの実現では、Sysmac Studioの仮想撮影機能を用いて、3Dシミュレーション内で仮想撮影して画像を生成し、画像処理設定を行うことで、現場に行くことなく(実際の画像がなくても)検査工程の設計が行える環境を提供してきた。しかし、Sysmac Studioでは光を考慮した撮影と照明を再現することができなかったため、現場での調整作業がどうしても必要となり、それが作業者の大きな負担になっていた。「調整が完了するまで、カメラ設定、照明設定、ロボットのティーチング、画像処理設定を何度も繰り返す必要があり、終わるまで工場から出られない。それが現場での調整作業の実情だ」と岩村氏は説明する。
そこで同社は、産業用ロボットを用いた画像検査システムの実現に伴う一連の現場調整作業の効率化を目的に、Sysmac StudioとOmniverse、Magic Leap 2の連携、これらを支えるデル・テクノロジーズのワークステーションの活用による仮想空間でのカメラ/照明設定の再現と、ロボットのティーチングを実現。「Sysmac Studioの持っているロボットのキネマティクス、ダイナミクス演算と、Omniverseのフォトリアリスティックなレンダリング、さらにMagic Leap 2によるメタバース空間でのティーチングの融合により、現場調整作業の課題を解消しようと考えた」(岩村氏)。
カメラ/照明設定では、Omniverseによるリアルタイムのフォトリアリスティックなレンダリングと、物理ベースのマテリアル設定、正確なカメラ/照明のシミュレーションが欠かせなかったという。さらに、Magic Leap 2関しては、視野角、ディミング機能、描画性能が他のMR(複合現実)デバイスよりも優れており、「数mm程度のわずかな誤差で正確なティーチングが行える」(岩村氏)とのことだ。
講演では、実際に「2023国際ロボット展」や「IIFES2024」で出展したネジ締め検査システム(ロボットの手先にネジ締め機とカメラ&照明を備え、ネジ締めとその検査を行う)の実機を構築する際、Sysmac Studio×Omniverse×Magic Leap 2を用いた仮想空間で調整作業を行ったことを紹介。岩村氏は、仮想環境での照明設定、メタバース環境でのロボットのティーチング、画像処理設定における作業プロセスと、仮想空間での各種調整により、実空間で同じ画像判定結果を得ることができたことを説明し、「仮想空間でカメラ/照明設定を再現し、現場での画像処理調整レスと、現場でのロボットティーチング調整レスを実現できた」(岩村氏)と評価する。
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