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データの利活用で現場力を高める、オムロンが目指す工場のスマート化FAインタビュー

人手不足、品質保証、エネルギー削減など、製造現場が抱える課題は複雑化している。そこで必要になってくるのが工場の自動化、スマート化だ。今後の事業展開の方向性などについて、オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部 本部長の大場恒俊氏に話を聞いた。

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 人手不足、品質保証、エネルギー削減など、製造現場が抱える課題は複雑化している。それらの課題に対応するために必要になってくるのが工場の自動化、スマート化だ。その中で、オムロンは「integrated 制御進化」「intelligent 知能化」「interactive 人と機械の新しい協調」を融合させたコンセプト「i-Automation!」を軸にしたソリューションを提案している。どのように現状を捉え、今後の方向性を考えているのか、オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部 本部長の大場恒俊氏に話を聞いた。

求められる自動化へのコンセプトは地域によって異なる

MONOist 工場の自動化やスマート化の流れをどのように見ていますか。

大場氏 米中をはじめとする地政学リスクの高まり、地産地消の動きの加速などにより、自動化への投資はグローバルで活発化している。

 加えて、これまでの生産性向上の一辺倒だけでなく、カーボンニュートラルなどへの対応が求められており、自動車業界や半導体業界などにおいては積極的に自動化やカーボンニュートラルへの投資が行われている。


オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部 本部長の大場恒俊氏[クリックで拡大]出所:オムロン

 ただ、自動化、スマート化といっても、地域によってニーズは異なってくる。例えば、米国では今、国家プロジェクトとして半導体やEV(電気自動車)バッテリーへの投資を促しており、さまざまな企業が投資を表明している。ただ、米国では工場を支える技術者が不足しているため、できるだけ人手に頼らないフル自動化のコンセプトが求められている。

 一方、中国をはじめとするアジアでは労働集約的な生産をしてきたが、人件費が上がり徐々に自動化が進んできた。これまでは難しい作業は人、簡単な作業は機械が行うなどしてきたが、より難しい作業の領域も自動化が求められてきている。

 このように同じ自動化でも地域によってニーズは異なっており、われわれもそれぞれの地域に合わせた自動化を提供している。

MONOist そういった自動化、スマート化の流れにはどんな課題があるでしょうか。

大場氏 現場を支える技術者らの人材不足は大きな問題になっている。その中で、生産性を上げ、品質を高め、エネルギーも削減するという3つ巴の課題を、現場にあるデータを“利活用”することで解決しようという流れが出てきている。

 ただ、工場にはデータがあふれている。質のいいデータも悪いデータもあるため、データの抽出、活用の方法に課題が残っている。

 大企業なら質のいいデータを集めるために、たくさんのセンサーなどを用いてデータを収集し、プラットフォームを作り、専門家に分析させるということができるかもしれない。われわれは新しい設備を作らなくても、既存の設備にレトロフィットさせ、センシングしてさらに制御まで行うようなソリューションを提案している。

MONOist そういった課題解決に向けて「IIFES 2024」(リアル展:1月31日〜2月2日、東京ビッグサイト)ではどのような展示を行いますか。

大場氏 IIFES 2024ではフル自動化や人と機械の共存など、ニーズに合わせて「人を超えるフル自動化ライン」「人とロボットが高度に協調するフレキシブルライン」という2つの次世代コンセプトラインを展示する。

 その基になるのは、ミリ秒単位で時刻同期しているデータだ。他社製品も含めて時刻同期したデータを集められるからこそ、何時何分何秒何ミリ秒に何が起こっているかが正確に分かる。

 「人を超えるフル自動化ライン」では、途中の工程で生じたずれをセンサーで検出し、そのデータをロボットに反映し、補正させて作業する姿を実現している。

 自動化が進むほど、保守、保全まで含めた製造工程全体をカバーするデジタル化が必要になる。生産性や品質の向上、消費電力の削減が求められる中で、1つ1つの装置が複雑になっている。例えば検査工程で不具合が出たら、それを前の工程にフィードバックして制御を変えるなど精密なデータのやりとりを前後の工程でしないといけない。その時に、ミリ秒単位で時刻同期したデータを集めないと、フィードバックがずれてしまう。

 また、オムロンでは監視が必要な設備40装置以上、現場で頻発する設備異常50個以上を監視する状態監視機器もそろえている。IIFESでも1つの機器を取り付けるだけで、熟練技術者でも見逃すようなわずかな音の変化などを捉え、タブレット端末などを通して異常を知らせるアプリケーションを展示する。

 われわれの3Dシミュレーションソフト「Sysmac Studio」がNVIDIAのプラットフォーム「NVIDIA Omniverse」と連携し、仮想空間上で照明設定の検証ができるようになっている。工場内には窓からさまざまな光が入ってくる。午前中は検査で検出できた傷が、午後になったら光の加減が変わって検出できなくなるケースもある。IIFESではスマートグラスを通して、仮想空間上で実際の照明条件が見られる展示も行う。

MONOist 今後の事業展望を教えてください。

大場氏 現場にあふれているデータを収集、活用しやすくするハード、ソフトの開発、充実を進めていく。

 2023年10月にわれわれが出資を発表したソルティスターは、組み込み型高速データ統合技術を有している。製造装置にはさまざまなメーカーの製品が使われている。そういった、オムロンに限らずさまざまな製品から集めたデータを、時刻の統一されたデータの塊になるような技術を持っている。

 ミリ秒単位で時刻同期したデータが取れると、1個の製品を作るのにどれくらいのエネルギーを使ったかも正確に把握できる。工場やフロア、生産ライン単位に加えて、1つ1つの制御単位まで見えようになる。IIFES 2024ではそれらを国際的なデータ共有の仕組みにのっとって見える化する展示も行う。

 日本には、変化に柔軟に対応したり、絶えず改善を続けたりしていく現場力が強くても、データを活用できずに苦労している企業は多い。製造現場でのデータ活用が進めば、もっとその現場力を飛躍的に高めることができる。日本の製造業の価値向上に貢献していきたい。

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