ランクセスの2023年通期業績は在庫調整の影響で減収減益、2024年通期は回復見込み:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
ランクセスは、東京都内で記者会見を開き、2023年通期業績および2024年の事業活動や業績見通しを説明した。
環境配慮と2024年度の事業活動
ランクセスは現在、コンシューマープロテクションやスペシャリティーアディティブスの事業展開に注力している。
革新的なソリューションとして、コンシューマープロテクションでは、化粧品とパーソナルケア製品向けの防腐剤「ネオロン PH100」や長期消臭効果を実現する特殊銀系抗菌剤「シルバーデュア」、大気中のCO2を吸着するイオン交換樹脂「レバチット VP OC 1065」を提供している。
スペシャリティーアディティブスでは、ドイツ国内で調達された再生可能原料を基に製造された持続可能な淡色硫黄系極圧添加剤「アディティン スコープブルー」と、電気自動車(EV)向けの高電圧コネクタ用オレンジ染料「マクロレックス オレンジHT」や「バイプラスト オレンジ TP LXS 51137」を提供している。加えて、含有物の50%以上に持続可能な原材料を使用した、ゴムパウンド向け老化防止剤「ブルカノックス HS」を2024年末までに提供開始予定だ。
環境配慮に関しては、さまざまな気候保護施策により2019年以降、「Scope1(燃料の使用や工業プロセスでの直接排出の温室効果ガス排出量)」と「Scope2(他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う温室効果ガスの間接排出量)」を年率平均で11%削減している。
「Scope3(Scope1、2を除く事業者の活動に関連する他社のGHGの排出量)」も2019年以降、年率平均で14%削減している。
また、持続可能性を備えた製品であることを示す同社の認証ラベル「スコープブルー」を取得した製品を増やしている。スコープブルーを取得した製品には、保存料、可塑剤、潤滑油添加剤、ポリマー添加剤、老化防止剤、イオン交換樹脂がある。米津氏は「全体のうちスコープブルーを取得した製品は多く見積って2〜3割だ」と述べた。
さらに、カーボンフットプリントを自動計算するソフトウェアを開発した。このソフトウェアは顧客の気候目標をサポートするもので、安全性と品質を証明する認証もドイツで取得している。
2024年通期の業績については、コンシューマープロテクションはほぼ前年並みの業績、スペシャリティーアディティブは前年をやや上回る業績、アドバンスト中間体は前年を大幅に上回る業績を見込んでいる。
さらに、2024年の上半期は需要低迷が続くことや農業関連顧客の在庫調整負担の影響を受けるものの、下半期以降に販売数量が緩やかに改善する見通しだ。2024年通期のEBITDAは2023年の業績は上回るが、同社の平均的な水準を大幅に下回ると想定している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- Scope1と2の温室効果ガス排出量を年率11%で削減、ランクセスのアクションとは
ドイツの特殊化学薬品メーカーのランクセスは、2040年までにScope1、2でカーボンニュートラルを実現するために、脱炭素を加速するさまざまな取り組みを展開している。 - 旭化成がバイオエタノールからプロピレンやキシレンなどを生産する技術を開発
旭化成は、「人とくるまのテクノロジー展 2023 横浜」で、バイオエタノールからバイオエチレン、バイオプロピレン、バイオベンゼン、バイオトルエン、バイオキシレンなどを製造する技術の開発を進めていることを発表した。 - 住友ゴムの白河工場が目指す水素の地産地消モデルとは
住友ゴム工業は、福島県白河市の白河工場で、水素エネルギーを活用したタイヤ製造に成功した他、水素の地産地消モデルの構築を進めている。 - 三井化学と大阪ガスが泉北コンビナートから排出されるCO2の利活用の共同検討を開始
三井化学と大阪ガスは、泉北コンビナートから排出されるCO2を回収し、利活用する事業の共同検討を開始した。 - リチウムイオン電池の新たな電極製造法を開発、CO2の排出量削減に貢献
日本ゼオンは、リチウムイオン電池の新しい電極製造方法を開発した。電極の大型乾燥工程が不要で二酸化炭素の排出量を削減する他、正負両極に適用可能で、かつ従来法と同等以上の速度で成形できる。 - リチウムイオン電池からのレアメタル回収に新技術、無機酸や有機溶媒を使わない
自動車の排ガス触媒やリチウムイオン電池から環境に優しく高効率にレアメタルを回収できる「イオン液体」と「深共晶溶媒」を開発した九州大学大学院 主幹教授の後藤雅宏氏に、両溶媒の開発背景やこれらを用いた溶媒抽出法のプロセスおよび成果、今後の展開と課題について聞いた。