トウモロコシ由来のオリゴペプチドが肥満や脂肪肝を改善する:医療技術ニュース
理化学研究所は、トウモロコシ由来のコーンオリゴペプチドが、高脂肪食による肥満や脂肪肝を改善すると発表した。高脂肪食による酸化や炎症、細胞障害を軽減し、NASHによる発がんの原因とされる肝線維化を改善する。
理化学研究所は2024年3月25日、トウモロコシ由来のコーンオリゴペプチドが、高脂肪食による肥満や脂肪肝を改善すると発表した。高脂肪食による酸化や炎症、細胞障害を軽減し、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)による発がんの原因とされる肝線維化を改善する。東京慈恵会医科大学らとの国際共同研究による成果だ。
同研究では、コーンオリゴペプチドの経口投与により、高脂肪食による肥満やNASHの病態進展に与える影響を検討。早期段階のNAFDL(非アルコール性脂肪性肝疾患)病態モデルとして肥満マウスを作製し、コーンオリゴペプチドを経口投与した。
その結果、コーンオリゴペプチドを与えた肥満マウスでは、体重増加や肝障害マーカーの増加、脂質代謝関連遺伝子、小胞体ストレス関連遺伝子、酸化ストレス関連遺伝子の発現が抑制された。肝臓では、炎症性細胞浸潤、DNA損傷や活性酸素の産生も減少しており、コーンオリゴペプチド投与によって肝臓内で脂肪の蓄積が抑えられ、酸化ストレスが減少することが示唆された。
次に、後期段階のNAFDL病態モデルとしてNASHマウスを作製し、コーンオリゴペプチドを経口投与したところ、体重増加や肝組織中炎症関連分子Mcp1の遺伝子発現が抑制された。肝線維化の指標となる肝星細胞の活性化や、コラーゲンの産生も抑制されていた。
コーンオリゴペプチドを投与した肥満マウスとNASHマウスの肝組織では、ミトコンドリアでサーチュイン遺伝子のSirt3、Sirt5遺伝子の発現が選択的に抑制されていることが、プロテオーム解析で判明した。コーンオリゴペプチドは、Sirt3、5を介して、好気呼吸の最終段階となる電子伝達系の活性化を抑制していると考えられる。
コーンオリゴペプチドは、トウモロコシのデンプンを取り除いたコーングルテンミールを分解して得る短鎖ペプチド。血圧降下やアルコール代謝促進、肝臓保護などさまざまな機能を有することが報告されている。
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