日本ガイシのNAS電池をハンガリーのエンジニアリング企業が採用:材料技術
日本ガイシは、ハンガリーのエンジニアリング企業であるDuna Center Therm Uzemi Szolgaltatoを通じて、同国の変圧器メーカーGanz Transformers and Electric Rotating Machinesから電力貯蔵用NAS電池を受注したと発表した。
日本ガイシは2024年4月15日、ハンガリーのエンジニアリング企業であるDuna Center Therm Uzemi Szolgaltatoを通じて、同国の変圧器メーカーGanz Transformers and Electric Rotating Machines(以下、Ganz)から電力貯蔵用NAS電池を受注したと発表した。
採用に至った要因
受注したNAS電池は、Ganzの生産拠点に設置され、敷地内のメガワット(MW)級の太陽光発電設備(PV)と連携して、同拠点の再生可能エネルギー(再エネ)の利用率向上に活用される。
日本ガイシのNAS電池は、大容量で長時間放電でき太陽光発電のピークシフトに適している点や事業化以来20年以上に及ぶ豊富な実績がある点、多重的な安全設計を施している点などから、安定的な生産を支える蓄電技術として信頼性が高いと評価され採用に至った。
導入の背景
2050年のカーボンニュートラル実現を法制化しているハンガリーでは、2030年までに発電量の90%を低炭素電源に転換する目標を掲げており、達成のため再エネの導入加速が急務となっている。また、昨今の欧州域内におけるエネルギー価格高騰による経済への影響から、ハンガリー国内で事業活動をする企業の再エネ発電と貯蔵設備導入に対する支援策「Factory Rescue Program」を実施している。Ganzもこの支援策を活用してNAS電池とPVを導入する。
さらに、天候や昼夜などによって発電量が左右される再エネを安定して利用するには、電力の需給ギャップをなくすための電源(調整力)が必要になるが、同国は平たんな地形が多く高低差が必要な揚水発電施設の建設が困難なため、代替としてNAS電池のような大容量蓄電池の需要が高まっている。NAS電池は、ハンガリーのエネルギー研究所での定置用蓄電池の実証プロジェクトでも採用されており、今後さらなる採用拡大が期待されている。
なお、NAS電池は、再エネの安定化や電力需給バランスの調整、非常用電源などさまざまな用途で利用されており、現在までに全世界で250カ所を超える施設で採用され、20年以上の安定的な運用実績がある。
日本ガイシのNAS電池の概要
NAS電池は日本ガイシが世界で初めて実用化したMW級の大容量蓄電池だ。大容量、高エネルギー密度(コンパクト)、長寿命を特徴とし、長期にわたり高出力の電力を長時間、安定して供給できる。全世界で250カ所以上、総出力720MW/総容量約5000MW時の設置実績を持ち、電力負荷平準によるピークカットや非常電源の用途で利用されている。
さらに、再生可能エネルギーの安定化やスマートグリッドの構築など、さまざまな用途で利用されており、環境負荷の低減、カーボンニュートラルの実現に貢献している。
同電池は、世界的な第三者安全科学機関であるUL Solutionsによる評価プログラムを通じ、定置用蓄電池の安全規格「UL1973」のUL認証(単電池/モジュール)を取得している。また、バッテリーおよび蓄電池システム内の火災リスクを検証する試験規格である「UL9540A」規格に基づく試験レポート(単電池、モジュール、設置レベル)を取得し、UL9540A規格に基づく要件への準拠を確認している。
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