国際宇宙ステーション内の自律移動型船内カメラにIMUが採用:組み込み採用事例
国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟内で機能実証中のJEM自律移動型船内カメラ「Int-Ball2」に、セイコーエプソンのIMU「M-G370Series」が採用された。
セイコーエプソンは2024年3月11日、国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟内で機能実証を行っている「JEM自律移動型船内カメラ」の2号機となる「Internal Ball Camera2(Int-Ball2)」に、同社のIMU(慣性計測ユニット)「M-G370Series」が採用されたことを発表した。2023年6月より、稼働を開始している。
Int-Ball2は、国際宇宙ステーション内を飛び回り、宇宙飛行士の代わりに写真や動画を撮影するドローンロボット。地上の管制員が操作し、宇宙飛行士が作業する様子などをカメラで撮影してモニターする。
充電式となっており、充電器へは自動で帰還する。その際、無重力空間を3自由度位置(X、Y、Z)と、3つの自由度回転姿勢(ロール、ピッチ、ヨー)を制御しながら空中経路を生成して帰還する。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、日本実験棟内での撮影自動化に向け、Int-Ball2の「自律飛行技術」「充電器への自動ドッキング技術」の実証に成功した。同実証にはセイコーエプソンのIMUを活用しており、無重力空間における飛行制御の空間位置と回転姿勢の検出に貢献した。
M-G370Seriesは、低ノイズな3軸ジャイロと3軸加速度を備えた6軸センサーモジュール、独自の水晶製ジャイロセンサーを搭載する。24×24×10mm3、10gと小型軽量で、3.3V、16mAのローパワー設計となっている。
国際宇宙ステーションでは現在、宇宙飛行士がカメラの設定や画角などを調整して撮影している。今後、Int-Ball2を使用することで、地上から遠隔で撮影に関する一連作業を操作可能になり、宇宙飛行士の作業負担軽減が期待される。
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