LIXIL“100周年”の新型トイレは「極みトリプル水流」で便器内側を隅々まで洗う:イノベーションのレシピ(2/2 ページ)
LIXILが新型タンクレストイレ「SATIS X」を発表。水流によって便器内側を洗浄する仕組みを抜本的に見直した「極みトリプル水流」を採用するなどして、日常生活におけるトイレ掃除の負荷を大幅に削減できることを最大の特徴とする。
便器内側の全面を強力に洗う「極みトリプル水流」の仕組み
LIXILが「自ら掃除をしてくれる全く新しいタンクレストイレ」と定義するSATIS Xは、「目に見える汚れ」と「目に見えない汚れ」の両方について、トイレ自ら掃除するための機能を搭載した。
「目に見える汚れ」を落とすため新たに開発したのが、3方向の水流で使うたびに便器を掃除する極みトリプル水流である。そもそも、トイレの水を流すという機能は、便器に汚物を残さないように流しきることを目的としており、便器内側の洗浄には主眼を置いていなかった。トイレに対する要件では節水に対する要求が厳しい時期が長く続いており、より少ない水で汚物を流しきらなければならず、このため便器内側に汚物による汚れが残さないことを目的とする水の流し方にはなっていなかった。
実際に、従来のトイレで水を流す場合、水流の強さは均等ではなくムラがあり、そのことに起因して汚れが残ってしまうことがあった。また、水流が十分に当たらない箇所もあり、そこも汚れが残りやすい一因になっていた。
極みトリプル水流は、従来は1方向から流していた水流を3方向から流して便器内側の全面を強力に洗うことを目的に開発された。ただし、単に水流を3方向から流すだけでは便器内側の十分な洗浄を実現できないため、3つの取り組みを行った。
1つ目は、便器内側を3つのエリアに分けて全面を強力に洗う仕組みの開発だ。水流を3つに分けるだけでは勢いも3分割されてしまうため“全面を強力に洗う”ことができない。そこで、3つの吐水口から流す水流を切り替えることで、各水流の強さを100%の状態に最大化した。なお、3つの吐水口から100%の水流の強さで水を流すと、使用する水量が多くなるイメージがあるが、SATIS Xの水使用量は大で6l(リットル)、小で5lで、節水基準の6.5l以下を満たしている。
2つ目は、水流を高速かつ広範囲にするための新設計の吐水口である。従来のトイレの吐水口と比べて薄く広く強力な水流を実現している。「洗車時に水道につないだホースの先を平らにつぶして水流を強くするのと同じイメージだ」(田中氏)。
3つ目は、1つ目と2つ目の取り組みで作り出した水流の勢いを維持したまま、便器の内側全体に行き渡らせるため新たに設計した便器形状だ。従来のトイレは、便器内側の汚物を流しきることを目的として便器形状に段差が設けられていた。この段差によって便器内側の奥側で水流が弱まってしまうことが課題だったが、SATIS Xはこの段差をなくして水流の勢いを維持できるようにした。
また、トイレでは、便器内側だけでなくシャワートイレのノズルや周辺も汚れが残りやすい。SATIS Xは、ノズル本体を従来の2倍以上の強さで洗浄する「ノズルオートクリーニング(パワフル)」や、使用後にノズルの格納口となるノズルシャッターも洗浄する「シャッタークリーニング」といった機能を新たに搭載している。
「目に見えない汚れ」への対応では、専用洗剤を用いて1日1回便器内側を泡で洗う「泡クリーン」を開発した。
泡クリーンは、1日1回設定した時間で、便器内側に泡を作って溜め、泡を旋回させるように動かして便器内側の全体を洗ってから3時間漬けおくというプロセスを自動で実行する。これによって、泡が微細な汚れを捉えて洗い流すサイクルを1日1回行うことで、「目に見えない汚れ」も可能な限り落とせるとする。なお、専用洗剤のタンクはトレイ後部にあり、満タン状態から約5カ月間継続使用が可能だ。LIXILが販売する専用洗剤の他、食器洗い機用の中性洗剤なども利用できるとしている。
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