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日本の平均給与はOECD平均値を1割以上下回る! 国際比較で見る私たちの給与水準小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(20)(2/2 ページ)

ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は「平均給与」に注目します。

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OECDの主要先進国中では最下位

 では、日本の平均給与は国際的に見て高いのか、それとも低いのか。ここでは、OECDで公開されているデータで水準の比較をしてみましょう。

図2:実質値の平均給与(2022年、購買力平価換算)
図2:実質値の平均給与(2022年、購買力平価換算)[クリックして拡大] 出所:OECD統計データより筆者にて作成

 図2は各国の平均給与について、実質値の購買力平価換算による推移をグラフ化したものです。日本は2022年時点でOECDの主要先進国中、最も低い水準となっており、OECDの平均値やイタリア、韓国を下回ります。ドイツやカナダの7割弱、米国の約半分という水準ということになります。

 また、他の主要先進国の傾向を見ると、イタリアは横ばい傾向、イギリスは2008年から停滞傾向にある以外は、実質値でも成長が続いている事が分かりますね。労働者が実質的にも豊かになっていて、日本よりもかなり高い水準であることが分かります。

 この指標は各国の実質値を、購買力平価でドル換算したものとなっています。購買力平価とは、各国のモノやサービスの価格を基にした通貨の換算レートです。購買力平価でドル換算すると、物価のレベルを米国並みにそろえた上での数値を比較することになります。

 物価指数が時系列的な物価指数(デフレータ)であるのに対して、購買力平価は空間的なデフレータと呼ばれます。為替レートでドル換算するよりも、より生活実感に近い数値比較ができるといわれていて、OECDでは購買力平価によるドル換算が主流となっています。

図3:平均給与の実質値(2022年、購買力平価換算)
図3:平均給与の実質値(2022年、購買力平価換算)[クリックして拡大] 出所:OECD統計データより筆者にて作成

 図3が最新のデータである2022年の平均給与を国際比較したグラフです。実質化の基準年が2022年ですので、この数値は実質値であり、名目値でもあります。

 日本は4万1509ドルで、先進国の中ではかなり低い水準になっています。データのある中では35カ国中25位で、OECDの平均値を1割以上下回ります。他の主要先進国との差も大きく開いていることが良く分かりますね。

今後の給与水準には期待できそう?

 残念ながら日本の給与水準は、先進国の中ではかなり低い水準であるというのが実際のところのようです。もちろん、給与(賃金)は付加価値の分配ですので、仕事の付加価値が上がらなければ給与も上がらないのは道理です。

 とはいえ、近年は名目の給与水準や付加価値が上昇しつつありますので、今後は成長路線へと転換が進む期待も持てそうです。今回解説した指標の読み方を踏まえて、ぜひ今後、OECDの公表データをチェックしてみてください。

記事のご感想はこちらから
⇒本連載の目次はこちら
⇒前回連載の「『ファクト』から考える中小製造業の生きる道」はこちら

筆者紹介

小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役

 慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。

 医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業などを展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。


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