次に買うクルマのパワートレインやブランドは? グローバルでの調査結果:電動化
デロイト トーマツ グループは26カ国2万7000人を対象にした自動車に関する消費者意識調査の結果を発表した。
デロイト トーマツ グループは2024年2月29日、26カ国2万7000人を対象にした自動車に関する消費者意識調査の結果を発表した。パワートレイン別の購入意向、異なるブランドへの乗り換え、コネクテッド機能やサブスクリプションサービスへのニーズなどについて調べた。
次の自動車購入で希望するパワートレインについて尋ねると、EV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)に対する関心が弱まっていることが分かった。高金利や店頭価格の上昇、購入補助金の終了などが関心低下や市場成長鈍化の背景にあるとしている。
中国とインドを除く主要各国では、電動化されていない純内燃機関車であるガソリンエンジン車やディーゼルエンジン車の購入意向が前年から増加した。米国は純内燃機関車の購入意向が前年比10ポイント増と顕著だが、その一方でEV普及率は2023年後半も上昇が続いている。欧州各国もEVシフトからの揺り戻しといえる変化が起きているという。ドイツ以外の欧州主要国でも純内燃機関車の購入意向が前年比で高まり、EVの購入意向は前年と同等か減少する傾向にある。
日本も欧米と同様で、純内燃機関車やHEV(ハイブリッド車)の購入意向が高まっている。EVの購入意向は弱まっており、特定の車種の人気に起因する勢いは失われつつあると指摘した。これに対し、中国の消費者の購入意向はEVが前年と比べて大きく増加し、純内燃機関車が大幅に減少した。HEVの購入意向は前年比4ポイント増となり、「HEVには一定の活路が残されている」(デロイト トーマツ グループ)と指摘した。
HEVを含め電動車を購入する主な理由はいずれの地域でも燃料費の削減が最多だった。ほぼ全ての市場の消費者にとって、環境への懸念よりもランニングコスト削減に対するニーズが上回っている。
充電や走行距離に対する受け止め
EVやPHEVの充電場所について尋ねると、自宅を挙げる回答が大多数だった。充電したい公共の場所に関しては「必要なときに充電器があればどこでもいい」が最多で、アメニティーを備えたEV専用の充電ステーションや、EV充電設備を備えた従来のガソリンスタンドを希望する声が多かった。公共の充電設備での支払いは、ほとんどの市場でクレジットカードが好まれる。中国や東南アジアではスマートフォンアプリによる支払いに関心が高い。前払いのサブスクリプションやロイヤリティーポイントに対する関心は各国で低い。
公共の充電設備でのバッテリー残量がない状態から80%まで充電するための想定待ち時間に関しては、10分以上が許容されており、必ずしも給油なみに充電時間を短縮する必要はない可能性がある。
1回の充電で走行できる距離に対する期待は市場によって大きく異なる。400km以上を求める消費者はインドでは40%だったが、ドイツでは67%を占める。
ブランド選びの基準
次に自動車を購入する際に現在の保有者と違うブランドを検討するかどうか尋ねると、異なるブランドに乗り換える消費者の割合はインドと中国で7割超だった。異なるブランドに乗り換えるという回答は日本やドイツでは少ない傾向にあるが、米国や韓国、東南アジアなど多くの市場で過半数に達した。
インドや中国では、異なるブランドに乗り換える理由として「新しいブランドにはほしい技術や機能がある」が最多だった。その他の市場では「他のブランドを試したい」という回答が多い。インドや中国では製品の特徴や品質に注目してブランドを選ぶ傾向にあるとしている。
コネクテッドサービスやサブスクリプションへの関心
コネクテッドサービスに対する追加費用の支払いについて尋ねると、インドや中国では許容する傾向が顕著だった。日米独など先進国では追加費用を支払いたくない回答が多く、今後の収益性の課題になりそうだ。コネクテッドカーのデータ管理に関して、米国やドイツでは「自動車メーカーや販売店も含めてどこも信用できない」という回答が3割を超えており、個人情報保護に敏感な地域ではサイバーセキュリティに対して特に配慮が求められるとしている。
ローンや一括払いなどでクルマを購入せずに利用するサブスクリプション契約は、18〜34歳の若者層を中心に浸透し始めているという。インドでは67%の若者層がサブスクリプションによる利用に興味を示しており、主な選択肢の1つになっている。中国でも48%の若者層がサブスクリプションによる利用に関心を持っている。なお、中国では55歳以上もサブスクリプションによる利用に興味を持っており、自家用車を所有することがステータスだった従来の中国の価値観に変化が起きているとしている。
日本でもサブスクリプションによる利用を提案する自動車メーカーが増えてきたが、総保有コストや月額費用の高さに懸念を示すユーザーの声が多い。自動車の購入に当たって想定する月々の支払い金額については、サブスクリプションによる利用に限らず6万円未満にしたいという回答が8割を超えた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 日系メーカーの新車生産は本格的に回復、コロナ禍前に届かない企業も
半導体不足などサプライチェーンの混乱で長らく低迷していた自動車生産が本格的な回復を見せている。日系乗用車メーカー8社の2023年の世界生産合計は、3年連続で前年実績を上回った。半導体不足が緩和し、国内生産や北米生産の回復がけん引した。 - EVシフトの伸び悩み期間「プラトー現象」を乗り越えるには
2024年に入り、EVシフトに関して、ネガティブなニュースも数多く見られるようになってきた。ニュースに一喜一憂する訳ではないが、これまで急激なEVシフトに対して、やや揺り戻しが起きているのではと感じる。 - 観光公害の解決から災害時の支援まで、日産が広げるEVのつながり
日産自動車は「ゼロ・エミッションフォーラム2024」を開催した。EVを中心とした脱炭素社会の実現に向けた取り組みについて語るフォーラムで、日産自動車と協力してカーボンニュートラル実現を目指す自治体や大学が登壇した。 - 自動運転技術は低速域でも着実に進化、ホンダが道の駅で実証
本田技術研究所はアグリサイエンスバレー常総において、一般の訪問者を対象にした自動走行技術の実証実験を開始する。 - ダイハツの軽商用EVが販売延期、トヨタやマツダはエンジン開発に注力
2024年も話題が盛りだくさんになりそうですね。 - ホンダがEVをゼロベースで作る、「既存のスペック競争には参加せず」
ホンダはEVのグローバルモデル「0シリーズ」を発表した。