H3ロケット2号機でCFRP製の超小型衛星放出機構を採用、3Uサイズの衛星に対応:材料技術
日機装は、超小型衛星「CubeSat」を格納して軌道上で放出する機構向けの構造部品を製造し、オービタルエンジニアリングに納入したと発表した。同部品を使ったCubeSat放出機構はJAXA種子島宇宙センターから打ち上げられたH3ロケットの試験機2号機により初めて宇宙空間に運ばれ、予定通り3Uサイズの衛星を放出している。
日機装は2024年2月22日、超小型衛星「CubeSat(キューブサット)」を格納して軌道上で放出する機構向けの構造部品(ボディーとフタ)を製造し、オービタルエンジニアリングに納入したと発表した。同部品は国内初の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製で世界最軽量のCubeSat放出機となっている(同社調べ)。
同部品を使ったCubeSat放出機構は同月17日にJAXA種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)から打ち上げられたH3ロケットの試験機2号機により初めて宇宙空間に運ばれ、予定通り3U衛星を放出している。
質量は約1.2kgでサイズが411.5×129.0×166.5mmの3U衛星放出機構(左)と質量は約1.9kgでサイズが427.5×273.3×166.5mmのW6U衛星放出機構(右)[クリックで拡大] 出所:日機装
オービタルエンジニアリングは、より大型のW6U衛星放出機構の開発も完了しており、スペースワンのカイロスロケットによるクラスター打ち上げを目指している。W6U衛星放出機構にも日機装のCFRP製部品が採用されている。日機装は今後、大型衛星に加えて、小型衛星の部品や関連製品の事業も拡大していく。
CubeSat放出機構とは
CubeSat放出機構は、1U(1辺10cmの立方体規格、3連サイズなら3U)から成るCubeSatを宇宙空間に放出する構造物だ。輸送効率が良いCubeSatは、地球観測や通信目的などでベンチャー企業と研究機関で利用が拡大している。国内で打ち上げの機会は増えると見込まれ、同部品の受注がさらに拡大することが期待される。
H3ロケット打ち上げでのミッション
H3ロケット試験機の2号機は「TIRSAT」など2基の人工衛星が搭載された。これまでH3ロケット試験機で2基の人工衛星を搭載する場合に利用されていたCubeSat放出機構は1Uサイズにしか対応していなかったが、今回の放出機構は最近の主流である3Uサイズにも使える。
製造の背景
日機装は航空機部品「カスケード」を40年にわたり製造し、CFRP成型技術を持っている。これを大型衛星の部品製造にも約20年にわたり展開。こうした実績により、オービタルエンジニアリングから依頼を受け、CFRP製CubeSat放出機構部品を製造した。ボディーは日機装独自の技術による一体成型で、強度と軽さに優れている。
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