ニデックは2024年1月24日、2024年3月期第3四半期(2023年4〜12月期)の連結決算を発表した。売上高は前年同期比3.2%増の1兆7546億円、営業利益が同36.1%増の1693億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益が同40.2%増の1459億円で、いずれも過去最高を更新して増収増益となった。
2024年3月期通期(2023年度)の業績予想は、売上高を1000億円増の2兆3000億円に上方修正したが、営業利益は400億円減の1800億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は300億円減の1350億円に見通しを引き下げた。EV(電気自動車)向け駆動用モーターの事業で財務健全化と今後の収益性強化に向けた構造改革費用450億円の計上を想定し、下方修正した。
EV向け駆動用モーター事業は、早期の市場投入やシェア拡大を優先して収益性の低い第1世代品を投入していたこともあり、利益面は厳しい状況に置かれている。第2世代品も、想定よりEVの価格下落が進んだことで収益性の確保が難しかった。この状況について、ニデック 代表取締役会長(CEO)の永守重信氏は「競合の部品も分析した結果、自分たちだけがもうかっていないのではなく、相手もものすごい赤字を抱えてやっている。われわれは技術的に全く負けていない。価格競争力もある」と述べた。
ニデック 常務執行役員(CFO)の佐村彰宣氏は、EV向け駆動用モーター事業について「2023年度第4四半期(2024年1〜3月)を大底とし、2024年度から着実に収益改善を図る」としている。売り上げに貢献するのは、ステランティスとの合弁会社だ。
この合弁会社で生産する駆動用モーターが2024年度も採用モデルを拡大する計画で、その売り上げを連結算入する。収益性を改善した駆動用モーターの第3世代品が利益面で貢献する。第3世代品は広州汽車など向けに納入が決まっており、第3世代品の売上比率を上げていくことで収益性を改善し、将来の成長投資にも備える。
ステランティスとの合弁会社での生産の垂直立ち上げに向けて、ニデックの中国の生産拠点から手厚くサポートする。中国では駆動用モーターで80万台の供給実績があり、ステランティスとの合弁会社をニデックグループを挙げて支える。中国で生産した駆動用モーターの部品は、2024年後半から欧州やそれ以外の地域にも輸出する。
また、中国市場で過熱する価格競争を踏まえて、収益性が低下する売り方を回避するための受注制限の他、開発や部品調達の現地化など収益性改善を推進する。ステランティスとの合弁会社とニデック本体は、人材や技術、生産での協業を強化していく。
2024年度のEV向け駆動用モーター事業の見通しは、「確実にこれはできる」(ニデック 副社長執行役員 車載事業本部長の岸田光哉氏)という計画に基づいているという。ステランティスとの合弁会社の貢献を抜きにしても、ニデック本体の車載事業として2024年度は「ブレークイーブン以上を達成する」(岸田氏)。
これまでは年間100万台を基準に事業計画を立てていたが、欧州におけるEV市場の変化を踏まえて、68万台をベースにしている。取引先でのEVとHEV(ハイブリッド車)の構成が変化したことを踏まえた。
永守氏は中国市場におけるEVの価格競争について、「いずれ、どこかで止まる」とコメントした。「これほど値下がりするのは(自動車以外の製品を含めて)初めてだ。初期は参加者が多く価格競争になるが、メーカーが潰れていく。潰れるメーカーについて行っても損をするだけ。技術的な価値を無視するメーカーはこちらから断っていく。中国の企業は輸出に力を入れていて、海外展開を前提にすると中国製で安いだけではいけないと分かっている。そこでわれわれが選ばれている」と述べた。
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