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溶媒内での超音波処理により、2D半導体単層の選択的単離に成功:研究開発の最前線
東京大学は、1分という短時間の溶媒内超音波処理で、サブナノ厚の2次元半導体の単層を選択的に単離することに成功した。同時に、不要なバルク結晶群を基板上から除去できるようになり、複雑なデバイス設計が可能となった。
東京大学は2024年1月10日、1分という短時間の溶媒内超音波処理で、サブナノ厚(厚さが1nm未満)の2次元(2D)半導体の単層を選択的に単離することに成功したと発表した。同時に、不要なバルク結晶群を基板上から除去できるようになり、複雑なデバイス設計が可能となった。
MoS2(二硫化モリブデン)などの遷移金属カルコゲナイドは、2D半導体と呼ばれ、わずか3原子で構成された単層でも半導体としての性質を発現する。従来は、接着テープに貼り付けた2D半導体結晶の剥離を繰り返して薄くし、基板上へ転写する剥離法により結晶調製をしていたが、単層と同時に99%を占めるバルク結晶が転写されていた。
今回の研究では、溶媒内での超音波処理を活用し、わずか1分で、約0.7nm厚の単層の結晶を単離する手法を開発。基板と強く相互作用するバルク結晶を選択的に除去しつつ、単層だけを基板上へ残すことに成功した。なお、優先的にバルク結晶が除かれるのは、単層とバルク結晶の面内断裂強度の違いにより説明できるという。
単層の周囲を覆っていたバルク結晶を除去したことで、単層結晶の周りに利用可能なスペースが生じ、研究の自由度が高まることとなった。これまで困難だった多数の電極を持つ単層デバイスの作製が可能になるなど、高度なデバイスの試作や2D半導体物性の開拓につながることが期待される。
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