ダイハツの認証不正、特に悪質な3車種が型式指定取り消しへ:品質不正問題
国土交通省はダイハツ工業に対する立ち入り検査の結果を発表するとともに、不正行為が悪質な3車種の型式指定を取り消す手続きを開始したと発表した。
国土交通省は2024年1月16日、ダイハツ工業に対する立ち入り検査の結果を発表するとともに、不正行為が悪質な3車種の型式指定を取り消す手続きを開始したと発表した。型式指定取り消しに当たって、同年1月23日にダイハツ工業に対する聴聞を行う(出頭の代わりに陳述書や証拠書類を提出することも認められている)。
特に悪質な不正行為が行われたと国土交通省が判断したのは、ダイハツの小型商用車「グランマックス」と、OEM(相手先ブランドによる生産)供給しているトヨタ自動車「タウンエース」、マツダ「ボンゴ」の計3車種で、いずれもトラックタイプのみ。本来はセンサーで衝突を検知して作動するエアバッグをタイマーで作動させるなど、試験車両に対する不正な加工を行い、申請内容とは異なる構造の車両で試験を実施した。型式指定取り消しの日までに生産された車両は型式指定取り消しの効力が及ばないものとされる。
基準不適合の可能性があるとダイハツが報告していた「キャスト」とトヨタ自動車にOEM供給している「ピクシスジョイ」については、リコールが必要な場合は速やかに届け出るよう指導した。
国土交通省は2023年12月20日にダイハツから不正行為の報告を受け、同年12月21日〜2024年1月9日まで立ち入り検査を実施した。その結果、ダイハツから報告があった46車種142件の不正行為を事実認定するとともに、新たに14件の不正行為を確認した。14件の内訳は、試験車両に不適切な加工を行う不正行為が9件、規定と異なる試験装置を使用する不正行為が5件だった。46車種156件の不正行為は、国土交通省で基準適合性の確認試験を速やかに実施し、その結果は順次公表する。
追加で判明した不正行為はダイハツ側で技術検証を行い、安全性能や環境性能が法規基準を満たしていることを確認したが、国土交通省の指示に基づいて当局立ち合いでの試験など必要な対応を行う。
ダイハツに対して国土交通大臣は道路運送車両法の規定に基づき、こうした不正行為を二度と起こさない体制を目指す抜本的な改革を促すための是正命令を発出した。また、ダイハツに対して1カ月以内に再発防止策を報告し、その後も四半期ごとに再発防止策の実施状況を報告するよう求めた。是正命令では、会社全体の業務運営体制の再構築、車両開発全体の業務管理手法の改善、不正行為を起こし得ない法規/認証関連業務の実施体制の構築を講じるべきだと述べた。
ダイハツは、自動車型式指定規則(昭和26年運輸省令第85号)第3条と、自動車型式指定規則第13条(平成28年9月15日以前に型式指定申請を行ったモデルについては、第3条)に違反している。
ダイハツは「日本の道路事情に即した『軽自動車』という社会インフラに関わる立場でありながら、認証を軽視していると指摘されざるを得ない不正行為により関連法令違反を行ってきたことは、自動車メーカーとしての根幹を揺るがす事態であると、大変重く受け止めています。全てのステークホルダーの信頼を裏切り、多大なご迷惑をおかけしていることを改めて深くおわびします」とコメントを発表した。
是正命令の指摘を踏まえて、認証業務の見直しだけでなく、経営、職場の風土/文化、適切なモノづくり/コトづくりの3つの観点から改革に取り組む。トヨタ自動車も、ダイハツの変革を全面的にサポートするとしている。
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