マザックが高機能複合素材を内製、工作機械の構造体への採用拡大へ:工作機械
ヤマザキマザックは高機能複合素材であるミネラルキャストを内製し、自社製工作機械への採用を拡大していく。
ヤマザキマザックは2023年12月25日、高機能複合素材であるミネラルキャストを内製し、自社製工作機械への採用を拡大していくことを発表した。
工作機械の構造体には鋳物を使うのが一般的だが、さらなる性能向上のためより優れた特性を持つ代替素材のニーズが高まっている。その1つがミネラルキャストだ。
ミネラルキャストは鉱石とエポキシ樹脂を結合させた複合素材で、高い振動減衰性能や熱安定性を有し、工作機械の高精度化、高能率化に貢献する。同社が行った試験では鋳物に用いる鋳鉄と比べて約10倍の振動減衰性能を持つことを確認しており、工作機械の稼働中に生する振動をより早く吸収し、加工精度の向上や工具の長寿命化につながる。熱伝導率は鋳鉄の約25分の1となっており、温度上昇に必要な熱量も高いため温度変化に強い工作機械の構造体を作ることができる。
型への流し込みから脱枠までの所要時間が24時間と鋳物に比べて短く、製造リードタイムを約6割短縮することができるという。あらかじめ配管やタップインサートをミネラルキャスト内に組み込むことができるなど設計の自由度が高く、材料の機械加工や組み立て工数の削減などのメリットもある。
また、製造工程においては、鋳物のような高温溶融処理が不要なため、鋳物に比べて労働環境の安全性が高く、CO2排出量も同社調べでは約8割減など大幅に少なくなる。一方で、日本国内ではミネラルキャストのメーカーは限定されており、輸送費を含めた調達コストが鋳物に比べて割高となっていた。
ヤマザキマザックは既に外部製作のミネラルキャストを一部機種に導入しており、ミネラルキャストの内製化と工作機械への採用拡大に向けて、数年前より研究を行っていた。
ミネラルキャストの製造には、適切な材料の選定、配合などの「材料の技術」、材料を均一に混ぜる「混合の技術」、複雑な形状の型枠に隙間なく流し込む「注入の技術」などのノウハウが必要となる。2023年度中に量産化に向けた技術開発を完了し、2024年度中に量産を開始、内製のミネラルキャストを採用した新機種の出荷を開始する予定となっている。
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