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小型衛星開発最短1年の実証へ、アクセルスペースが「PYXIS」を公開:宇宙開発(2/2 ページ)
アクセルスペースが2024年第1四半期に打ち上げ予定の小型衛星「PYXIS」のフライトモデルを報道陣に公開。これまで受注から打ち上げまで2〜3年かかっていた衛星の開発期間を、最短で1年に短縮可能な小型衛星プラットフォーム「AxelLiner」の実証衛星となっている。
ソニーの「ELTRES」による衛星無線通信の技術実証も
今回のPYXISのミッションは3つ。1つ目は、AxelLinerにおける100kg級小型衛星向けの汎用バスシステム「Bus-N」の実証である。2つ目は、衛星画像サービスのAxelGlobeに用いる次世代GRUSに搭載するセンサーの先行実証だ。同センサーにより取得できる衛星画像のSNR(信号雑音比)が向上し画質を高められるようになる。3つ目は、ソニーグループが展開するLPWA(低消費電力広域)ネットワーク「ELTRES」を用いた衛星無線通信の技術実証である。
「PYXIS」のミッションに用いられる機器。衛星側面から上方に向けて設置されている黒色のホーンは衛星の送受信機、上面手前にある穴は次世代「GRUS」向けセンサー、上面奥側にある8個のユニットは「ELTRES」の通信モジュールである[クリックで拡大]
これらのミッションに加えて、ミッションを終えた後の衛星の軌道寿命を大幅に短縮する「D-SAIL」の搭載も予定している。大型のフィルムを展開して抵抗を大きくすることでデオービット(軌道上からの離脱)を行う機構で、三軸織物の技術をベースとするサカセ・アドテックと共同開発している。JAXA(宇宙航空研究開発機構)の革新的衛星技術実証3号機、4号機の実証テーマとして選定されている他、今後アクセルスペースが開発する衛星にも標準搭載することになる。
PYXISは現在、東京都中央区にあるアクセルスペース本社のクリーンルーム内で、米国での打ち上げに向けて最終準備を進めているところだ。打ち上げはSpaceXの「Falcon 9」で行う計画である。
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