日立が「現場拡張メタバース」で原発原寸模型を移設、生成AIも活用:製造業メタバース(3/3 ページ)
日立製作所は、現場業務を迅速に進めるために開発に取り組んできたメタバース技術を組み合わせ、産業分野での活用を想定した「現場拡張メタバース」を開発したと発表した。
現場拡張メタバースの今後の展開
今後の展開について、日立製作所は、エネルギーや交通をはじめとするさまざまな分野の顧客と連携して現場拡張メタバースの効果を検証し、現場作業の効率化を通じてグローバルな社会インフラの持続可能な運用と管理に貢献する。
日立GE ニュークリア・エナジーと日立プラントコンストラクションは、メタバースを両社が重視する「三現主義(現場で現物を見て現実を認識することを重視する考え)」を拡張する技術と捉え、原子力発電所における各種作業に現場拡張メタバースを活用していく。
現在の構想としては、仮想空間上に作業現場を再現し、そこに設備の仕様や作業者、プロジェクトに関するさまざまな情報を登録することで、よりリアルな現場状況を理解できるようにする。これにより、原子力事業のような大規模なプロジェクトを安全かつ効率的に遂行することが可能となると見込む。加えて、顧客と仮想空間上に再現された作業現場ならびに蓄積された関連データを共有することで、顧客にとっても、作業計画や進捗状況などの把握が容易になる見通しだ。
さらに、仮想空間上に再現された作業現場を見ながら熟練者の指導を受けることで、より効果的な知識/ノウハウの習得が可能となるため、原子力産業で重要な課題となっている技術伝承/人財育成にも現場拡張メタバースを生かせるとみている。
現場拡張メタバース開発の背景
現在、製造業や建設業では、熟練労働者の退職が深刻化しており、効率的なノウハウの伝承や少ない人数で現場の維持管理が行える手法が求められている。解決策として、近年デジタルツインの開発や生成AIの活用などがグローバルで進められている。
しかし、現場作業を中心とする製造業や建設業では業務データの収集や活用で改善の余地がある企業が大半を占める。こういった状況を打開するために、単にデータを収集するだけでなく、それが現場のどこで取得されたデータなのか、どの設備/機器に関するデータなのか、といった、実際の空間情報とひも付ける仕組みや、収集されたデータを遠隔地にいる関係者同士がリアルタイムで閲覧しながら議論できるプラットフォームが必要とされている。
さらに、大量のデータの中から所望のデータに効率的にアクセスするツールや、高性能なPCや専用ソフトウェア、VR(仮想現実)ゴーグルなどがなくてもデータを閲覧できるシステムも求められている。
そこで、日立製作所は、遠隔地にいるユーザー同士でも同一の仮想空間を共有し、仮想空間内で同じ3Dモデルを見ながら会話をしたり一緒に活動をしたりすることができるメタバース技術に着目した。
メタバース技術の開発に当たり、これまでに蓄積した多様な産業分野でのデジタルソリューション開発の知見に基づき、簡便な3Dスキャン技術などにより仮想空間上に現場の3Dモデルを迅速に再現し、これを現場データの蓄積や可視化のためのプラットフォームと位置付けて、デジタル技術に不慣れな顧客でも生成AIを含むAI技術によって、容易にデータを利活用できるシステムの構築を目指した。
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