“指先”に赤外線センサーを搭載することでロボットは何ができるのか:2023国際ロボット展
Thinkerは「2023国際ロボット展」において、同社の近接覚センサー「TK-01」について紹介するとともに、これを組み合わせて実現したロボットハンド「Think Hand F」を参考出品した。
Thinkerは「2023国際ロボット展」(2023年11月29日〜12月2日、東京ビッグサイト)において、同社の近接覚センサー「TK-01」について紹介するとともに、これを組み合わせて実現したロボットハンド「Think Hand F」を参考出品した。
指先に赤外線センサーを搭載する意味
Thinkerは大阪大学大学院基礎工学研究科 助教の小山佳祐氏が開発した「近接覚センサー」を活用したソリューション提案を行う2022年設立の企業だ。小山氏はThinkerの取締役も務めている。
この近接覚センサーは赤外線を用いたもので、まず4つの赤外線モジュールで対象物との距離と角度に応じた反射光量を測定する。この測定結果を用いて軽量AIモデルにより素材ごとに異なる反射光量の影響を吸収し、距離と角度を推論するというものだ。赤外線を活用することで、従来のカメラシステムや光学式センサーが苦手としてきた透明のモノや鏡面仕様のものなどでも正確に認識が可能となる。
さらに、ポイントとなっているのがセンサーそのものが小型軽量であるためにロボットハンドの指先に搭載できるという点だ。センサーの基板サイズは55×15×2.5mmであり人手作業を代替するような一般的な作業で使われるロボットハンドであれば、指先に搭載できるサイズだ。このセンサーが指先に搭載されることで、対象物との距離と把持面との傾きを高精度で計測できるため、高精度な位置決めがなくても計測結果のフィードバックを受けながら対象物をつかむことができる。
Thinker 取締役 CTOの中野基輝氏は「どんなに高精度に位置決めをしても実際にモノをつかむロボットのハンド部分でずれが生じると正確にモノをつかむことができない。逆にセンサーを指先に近づけるとつかむところを正確にセンシングできる。このセンサーからリアルタイムでフィードバックを受けられるようになれば、ラフなティーチングでも確実にモノをつかむことができるようになる」とその価値について強調する。
iREX2023会場では、近接覚センサーを組み合わせて実現したロボットハンド「Think Hand F」のデモをThinkerブースで行い、近接覚センサーによりハンドの指の間に差し入れたカードの動きにロボットハンドがリアルタイムで追従する様子などを披露した。さらに、椿本チエインのブースでは同センサーを使った小型ハンドでボトルシップを組み立てるようなデモも行った。中野氏は「従来のロボットはつかめないものが多く、ティーチングに時間もかかり、段取り替えの負担やコストが高いなど、普及を阻む壁があった。近接覚センサーで指先からのセンシングを行うことで、これらの課題の多くを解決できる可能性がある。新たなロボットの用途を拡大していきたい」と語っている。
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