省エネ対策で最終消費量も減少か、エネルギー市場の2050年度予測:脱炭素
矢野経済研究所は、国内のエネルギー供給事業の市場規模予測を発表した。カーボンニュートラルに向けた省エネ対策によりエネルギー量ベースの市場規模は減少していく一方、エネルギー平均単価は上昇するとの見通しを示している。
矢野経済研究所は2023年11月20日、国内のエネルギー供給事業の市場規模予測を発表した。
同調査では、原油や天然ガスなどの「一次エネルギー」の供給と、需要家や家庭で使用される「最終エネルギー」の消費について、それぞれエネルギー量ベースと金額ベースで予測している。
国内の一次エネルギー供給の市場規模をエネルギー量ベースで見ると、2023年度は1万9630PJ(ペタジュール=1015J)、カーボンニュートラル達成に向けた中間目標を掲げる2030年度には1万7020PJに、最終目標の2050年度には1万6000PJになると予測した。
また、最終エネルギー消費をエネルギー量ベースで見ると、2023年度は1万3010PJで、2030年度には1万550PJ、2050年度には9010PJとなる見通しだとした。
カーボンニュートラルに向けた省エネ対策により、一次エネルギー供給も最終エネルギー消費も、減少していくと予測している。
金額ベースでは、一次エネルギー供給は2023年度が35.3兆円で、2030年度には30.2兆円、2050年度には21.8兆円になると予測した。最終エネルギー消費は2023年度に51.6兆円、2030年度には44.0兆円に減少するものの、2050年度には48.0兆円と増加に転じるとの見通しを示した。
中間目標や最終目標までの間に、水素やアンモニアなどのカーボンニュートラル燃料の市場導入量が拡大し、エネルギー転換プロセスが進むと見込まれている。これにより最終エネルギー消費時点でのエネルギー平均単価は、2023年度の1MJ(メガジュール=106J)あたり3.97円から、2030年度には同4.17円、2050年度には同5.33円に増大すると予測されている。同社は、平均単価の上昇を抑えるために、一次エネルギー供給時点のエネルギー平均単価を下げていく必要があるとしている。
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